はじめに
2025年4月7日から4月11日の週、日経平均は前日比で1000円以上動く日が続きました。この大きな変動の要因は、トランプ大統領による「相互関税」に関する発言が大きかったように思います。特に中国に対して厳しく、貿易赤字が大きい国への「相互関税」の措置を90日間停止する一方で、中国に対しては145%の関税措置を課すなど、強硬な姿勢を示しました。
これに対して、中国政府は、12日よりアメリカからの輸入品にあわせて125%の追加関税を課すと発表しました。一方で、今後アメリカがさらに対中関税を引き上げても「中国は相手にしない」とし、報復関税の打ち止めも宣言しました。こうした状況もあり、株式市場は若干落ち着きをみせていますが、トランプ大統領の出方次第では、波乱な相場も予想されます。
累進配当とは?
こうした波乱含みの相場に強いと思われるのが累進配当です。累進配当とは、企業が株主に支払う配当金を減配せず、維持または利益成長に応じて増加させることを目指す配当方針です。企業の業績が悪化しても減配しないことが基本であり、安定的な株主還元が期待できます。日経新聞社が2023年から「日経累進高配当指数」を算出していますが、今回の暴落時に日経平均は2024年8月の水準を割り込む場面もありましたが、同指数はその水準を割り込む事はありませんでした
今回は2025年に入り、累進配当の実施を公表した企業の一部を紹介します。
三菱商事
三菱商事(8058)は、三菱グループの大手総合商社です。2025年4月に「経営戦略2027」を公表しました。その中で、最大で発行済み株式総数の約17%にあたる6億8900万株、金額で、1兆円を上限とする自社株買いを実施すると発表しました。自社株買いにあわせて2026年3月期の1株配当は110円とし、前期比で10円増配する方針を示しました。配当総額は1.4兆円を見込んでいます。同社は、2016年から累進配当を実施する事を公表しています。
東京ガス
東京ガス(9531)は、都市ガス最大手です。同社は3月26日に「持続的な企業価値向上に向けた取組方針」を公表しました。 2026年3月期上期に上限3500万株で発行済み株式総数の9%、金額で1200億円を上限に自社株買いを実施すると発表しました。2025年3月期の年間配当も従来に比べて10円増やして80円にするとしています。2024年には累進配当を実施すると明言しています。同社には、アクティビストの米エリオット・マネジメントが、5%超保有し、資産売却と株主還元の強化を迫った背景がありました。なお、エリオット・マネジメントの保有は5%未満になった事が先週報じられました。
セブン&アイ・ホールディングス
セブン&アイ・ホールディングス(3382)は、コンビニエンスストアのセブン‐イレブンやスーパーのイトーヨーカ堂などを傘下に持つ流通持株会社です。マネジメント施策に関するアップデートを公表し、2030年度までに総額2兆円の自社株買いを実施すると発表しました。また、事業運営から創出される利益の株主への還元に関して累進配当を行う方針を示しました。4月に発行済み株式総数の15.4%にあたる4億株を上限に、金額で最大6000億円の自社株買いを実施すると発表しています。同社は、カナダの小売大手アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案を受けており、企業価値の向上を狙っています。