はじめに
多くの人にお金の心配事を聞いてきましたが、年齢を問わず悩みとして多いのが「老後のお金」だと感じます。
実際に預貯金や投資を始めるきっかけが「老後資金を貯めるため」という声も多く聞いてきました。ではいったい、どれくらい貯めたら、老後は安心だと感じられるのでしょうか。
あなたは、老後の生活について心配? それともそれほど心配でない?
あなたが、「老後の生活について『心配である』『それほど心配していない』のどちらですか』と聞かれたら、どちらでしょうか。「それほど心配していない」と即答できる人は、あまり多くないのではないか、と思います。
これは、貯蓄額によっても大きく左右されることをご存じでしょうか。実は、後者の「それほど心配していない」の回答が一気に増える「貯蓄額」のボーダーラインがあるのです。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]」(2024年調査、2025年発表)の「老後の生活についての考え方」のデータを見ていきましょう。
意外? 貯蓄がかなり多くても、老後はずっと心配?
まず1つめは「金融資産非保有」の人のデータです。老後の生活が「心配である」が83.9%、「それほど心配していない」が16.1%です。貯蓄がないと、老後を心配している人が圧倒的に多いことがわかります。それなら「貯蓄額が増えれば、心配している人が減るのでは?」と考えますよね。
そこで2つめに、「貯蓄額700~1000万円未満」の人のデータを見ましょう。老後の生活が「心配である」が81.4%、「それほど心配していない」が18.6%です。先ほどの、それぞれ83.9%と16.1%の数字と、あまり変わりがありません。貯蓄があと少しで1000万円に届きそうな人でも、貯蓄0の人と、老後についての心配度合いは、そう変わらないことがわかります。
「それなら、貯蓄額が1000万円を超えたら、さすがに老後の心配は減るのでは?」と思うでしょう。「貯蓄額1000~3000万円未満」の人について、筆者がデータから再計算しました。
老後の生活が「心配である」が74.2%、「それほど心配していない」が25.8%です。先ほど、貯蓄0の人はそれぞれ83.9%と16.1%の数字だったことを思うと、そこまで劇的に「それほど心配していない」と回答した人が増えていないですよね。1000~3000万円近くの貯蓄があるのにもかかわらず、7割以上の人が「老後の生活が心配」と答えていることに、少々驚くのではないでしょうか。
「老後をそれほど心配していない」が半数を超える貯蓄額は?
ところが、この老後の心配度合いのデータが大きく変わる貯蓄額があるのです。
「貯蓄額3000万円以上」の人のデータを見てみましょう。老後の生活が「心配である」が43.1%、「それほど心配していない」が56.9%です。ここで一気に、心配している人と、それほど心配していない人の数字が逆転しました。3000万円以上の貯蓄額の人は、「老後の生活をそれほど心配していない人」が増え、半数を超えました。
一人暮らしの場合、貯蓄が3000万円まででは、老後の生活が心配だと答えた人が多いですが、3000万円を超えると「それほど心配していない」人が増えます。“3000万円”という貯蓄額は、老後の安心度が増す一つのボーダーラインといえるでしょう。