はじめに

楽天が4Gの周波数帯取得に向けて総務省に申請することがわかりました。簡単にいうと全国に自前の携帯電話ネットワークを構築し、本格的な携帯電話事業に参入するということです。

これまで大手3社に集約されていた携帯電話事業に第4のプレイヤーが登場することで、業界では再び競争の激化が予想されます。

しかし、楽天はなぜ今、携帯事業に本格参入するのでしょうか? 戦略の意図を考えてみたいと思います。


楽天が携帯事業に本格参入

楽天が、NTTドコモ、au、ソフトバンクに続く第4の携帯キャリアとなることを表明しました。これまでもドコモの回線を借りて“格安スマホ”の「楽天モバイル」を運営していたわけですが、自前のキャリアとして携帯業界に参入するというのです。

2013年に独立系だったイー・アクセスとPHSのウィルコムがソフトバンクグループに買収されて以来、携帯業界は3社寡占の状況が続いていました。2014年、総務省の有識者会議がこの弊害を唱えるようになり、総務省の指導の結果、格安スマホ業者が多数登場。

こうして価格は安くなってきましたが、格安スマホにはふたつの弱点があります。ひとつは大手回線の一部しか使えないため、混雑時に回線スピードが遅くなるということ。これはお昼の12時~13時などに顕著に起きる現象です。

そしてもうひとつは料金プランがライトなものしか設定しづらいこと。月6GBまでのプランが中心となりますが、これだと動画視聴が多い消費者のニーズに応えることは難しい。このあたりが格安スマホと大手3社をユーザーが住み分けるひとつの境界線になっています。

では、なぜ楽天は4社目の携帯電話会社として名乗りを上げたのでしょうか?

EC市場の“楽天包囲網”を守れ

今回の楽天の動きにはライバルの存在が影響しています。ヤフーがソフトバンクとその傘下のワイモバイルユーザーを使って、ポイント10倍などのサービスで楽天市場の顧客を目に見えるペースで奪い始めているのです。

かつて楽天市場は圧倒的な規模のショッピングモールとして業界トップの揺るぎない地位にありました。

ところが近年になってアマゾンの成長でEC業界は競争が激化しています。そこに無視できない規模で台頭してきたのがYahoo!ショッピングです。

Yahoo!ショッピングは出店無料という採算度外視の手法で、モール参加企業を増やす施策を打ち出しました。その結果、楽天に出店する主要加盟店の多くが、ヤフーでも同じ商品を同じ価格で販売する状況が生まれました。

しかし、それだけであれば従来の顧客は引き続き楽天市場で買い物をしたでしょう。次いでヤフーが仕掛けたのはソフトバンク顧客のみ、Yahoo!ショッピングのポイントが10倍になる優遇サービスでした。

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