日本の金融政策はどこに向かう? 欧米では「脱・マイナス金利」の動きも
マイナス金利はまもなく4年目に突入
日本では2016年2月以降、マイナス金利政策が続けられています。貸出利ザヤの縮小から多くの地方銀行が営業赤字に陥るなど、その副作用が大きな問題となっています。実際、苦しい経営環境を受けて、金融機関はATM手数料の無料措置縮小などを打ち出しているほか、最近では口座維持手数料の導入による顧客への負担転嫁も議論されています。一方、世界に目を向けると、真逆の動きを取る国も現れ始めています。日本の金融政策はどこに向かおうとしているのか、他国の状況を踏まえながら考えてみたいと思います。
「米国とイランの対立が早晩収束する」と金融市場が考える根本理由
市場関係者のメインシナリオとは?
令和になって初めて迎えた新年。今年2020年はオリンピックイヤーでもあります。例年よりも明るい気持ちで今年のお正月を迎えた方も多かったのではないでしょうか。そんな国内の平和なムードを吹き飛ばすようなニュースが外電で伝わったのは、まだおとそ気分も抜けない1月3日のことでした。アメリカ軍が、イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官を、イラクの首都バグダッドで無人機攻撃によって殺害したのです。これにより、米国とイランの軍事的衝突の可能性が一気に高まりました。中東情勢の緊迫化を受けて原油価格は急上昇。安全資産とされる金および米国債に資金が逃避し、長期金利が低下、リスク回避の円高も誘発されています。こういう状況では日本株相場も売り圧力が強まるのは免れず、大発会の日経平均株価は451円安と急落しました。翌7日は米国株市場の反発、為替や原油相場の落ち着きを背景に大きく反発したものの、8日は複数の米メディアで「イランが米軍の駐留するイラクの基地を攻撃した」と伝わり、全面安の展開になりました。本稿執筆時点(8日午前10時)では、日経平均の下げ幅は600円に迫ろうとしています。年初から波乱の幕開けとなっ
「動かないドル円相場」の先行きは? 2020年の為替市場見通し
無風相場の裏で進行する“地殻変動”に備えよ
株式市場に先駆けて、為替市場では2020年相場が始まりました。ドル円相場は長らく値動きが乏しい状態が続いていますが、新しい年のマーケットはどうなるのでしょうか。為替相場に詳しい、みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔さんに、今年のドル円相場の見通しや金融市場の新しいテーマについて話を聞きました。
レコ大候補「パプリカ」と今年の漢字「令」に隠された景況感の暗号
子供の歌がヒットすると景気はどうなる?
世間はすっかり年末ムードです。12月12日の「いいじひとじ」の漢字の日に京都・清水寺で同寺貫主が揮毫するニュースは、年末の風物詩となっています。2019年の「今年の漢字」は「令」が選ばれました。また、12月30日には日本レコード大賞の発表があります。今年で61回目となる日本レコード大賞候補の優秀作品賞10作品の中には、小中学生ユニットFoorinが歌う「パプリカ」が選ばれています。同曲は2020応援ソングプロジェクトによる応援ソングです。実は、今年の漢字に「令」が選ばれたことと、「パプリカ」が今年のヒット曲になったことからは、日本の景気の先行きについて共通した暗示が読み取れます。2つの事象が指し示す景況感とは、明るいものなのでしょうか。
大幅高となった日本株市場は本当に「バブル」なのか
日経平均は一時2万4000円台に
12月13日、米中通商協議において第1段階の合意に至ったと米中両政府から発表されました。筆者にとってほぼ想定通りの合意内容でしたが、米国を中心に株式市場は好感しました。週明け16日には、米国の主要株価指数は最高値を更新。そして欧州でもStoxx600が同日に2015年以来の最高値を超え、上昇しました。
意外に堅調だった2019年の「中国株」、2020年の見通しは?
来年の注目ポイントはどこか
2019年は、米中貿易摩擦をめぐって世界の株式市場が大きく揺れ動いた1年になりました。ですが、その当事国である米国と中国の株価指数は意外に堅調です。米中の摩擦が完全に解消したとは考えにくい中、2020年の中国株市場はどのような展開が予想されるのでしょうか。中国株を取り巻く相場環境を踏まえて、来年の相場見通しについて考えてみたいと思います。
「ボーナスの増減」から占う、2020年前半の日本株相場の先行き
世間の懐事情を投資に生かす
ボーナスシーズン到来です。最近は、ボーナスは年1回夏季だけとか、制度自体を取り入れていない会社もあったり、職制的に受け取れない方も少なくなかったりします。「ボーナスの話をされても他人事」と思うかもしれません。とはいえ、ボーナスの動向は景気を適切に反映します。景気動向を知って株式投資に結びつけるには、ボーナスがどのような水準なのか、増えたのか減ったのかを知っておく必要があります。
2018年末の株価急落から1年、「FRB豹変」の行方を読み解く
2020年の金融市場はどこへ向かう?
今年も12月となり、年末の雰囲気が強まっています。ほぼ1年前を振り返ると、米国株市場が大荒れとなったことを思い出す方は多いのではないでしょうか。12月はクリスマス気分の中で金融市場は通常落ち着くことが多いですが、2018年12月はまったく様相が異なりました。米国株市場は歴史的な急落となったのです。そして、2018年通年での株式をはじめとしたリスク性資産のパフォーマンスは多くがマイナスに沈み、当時、2019年の金融市場に関して明るい展望はほとんど聞かれませんでした。
「VIXショック」にソックリ?株式相場は再び急落してしまうのか
月初の楽観ムードはどこへやら
師走相場は日経平均株価の年初来高値更新で始まりました。米国の年末商戦が好調と伝わったことや中国の景況感の回復など、買い材料に恵まれました。市場の一部では早くも「サンタクロース・ラリーが始まった」などという声も聞かれました。しかし、そんな矢先、楽観ムードは一瞬にして吹き飛びました。米国のドナルド・トランプ大統領がブラジルやアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課す考えを示したのです。これを受けて米国株が大幅安となり、12月3日の東京株式市場でも売りが先行しました。
米中貿易戦争で被弾、「タイ」の現地経済は今どうなっているのか
止まらぬ通貨高に打つ手は?
アジア新興国では、米中貿易戦争が長期化している中で、さまざまな問題が顕在化しています。その問題の1つがサプライチェーンの崩壊です。これまでサプライチェーンには多くのアジア新興国が組み込まれていたため、各国とも多かれ少なかれ影響を受けています。その影響が大きい国の1つが、タイです。同国では、今年3月に民政移管に向けた総選挙が実施されましたが、選挙後も目立った変化がみられません。改善のみられない政治情勢に加えて、経済のほうでも成長減速、不安定な通貨など、多くの問題を抱えています。そこで今回は、タイの現状と同国が抱えている問題点などに関して、確認してみたいと思います。
「12月相場」は投資家にとって天国か地獄か、世界の株式市場を総点検
11月の株高トレンドは続く?
11月の世界の株式市場では、米中貿易協議の「第1段階」の合意に対する期待の高まりで、株価は軒並み上昇しました。米国ではNYダウ、S&P500、ナスダック総合指数がそろって過去最高値を更新。日本でも、日経平均株価が昨秋以来となる2万3,000円台を回復しました。さらに、欧州では独DAX指数が最高値まで2%程度のところまで接近し、仏CAC40指数も12年ぶりの高値水準まで上昇しました。米中貿易問題の決着(一時休戦)は、それだけ世界経済を好転させうる材料として市場に受け止められているもようです。昨年の同時期とはまったく異なる景色が広がるグローバルの株式市場では、高揚感に包まれたまま年末を迎える公算が強まっています。
株高はどこまで続くか?「12月相場」で注目したい“2つの指標”
日経平均が年初来高値を更新
日経平均株価の上昇が続いています。11月26日には、一時2019年の高値となる2万3,608円まで上昇しました。株価が上昇している背景として、一般的には米中貿易交渉の進展が多く用いられます。しかし実際には、次の2つの要因も大きく影響を与えていると考えられています。
「2020年の投資先」としてベトナムが注目に値する3つの理由
“漁夫の利”だけじゃない投資妙味
米中間で貿易協議が続いていますが、2018年7月の第1弾の関税発動から1年以上が経ち、その影響は顕在化しています。米国は中国からの輸入を減らす一方、ベトナムや台湾などからの輸入を増やしています。ベトナムから米国への輸出は今年1~10月に前年同期比+28%と増加し、米国は全体の約23%を占める最大の輸出相手国に躍り出ました。また、同国の実質GDP(国内総生産)成長率は2019年7~9月期に同+7.3%へ加速しました。世界全体の景気が米中摩擦の影響で停滞気味な状況において、その健闘ぶりがうかがわれます。まさに「漁夫の利」を得た格好で、ベトナムは2020年の注目市場の1つと言っても過言ではないでしょう。しかし、注目の理由は「漁夫の利」だけではありません。
世界経済の“夜明け”は近い?「年末株高」の期待度を探る
最新マクロ指標を徹底分析
経済協力開発機構(OECD)が11月12日に発表した9月の景気先行指数は、前月からほぼ横ばいにとどまり、世界経済の夜明けが間近に迫っていることを示す結果となりました。米中通商協議の進展期待が維持される下、半導体をはじめとするハイテク分野の在庫調整が進展。政策期待も残存していることなどが背景にあり、世界的な株高傾向が強まりをみせています。
東西統一から30年、ドイツはなぜ再び“袋小路”に入ろうとしているのか
欧州屈指の経済大国で何が?
ベルリンの壁が崩壊してから、今年で30年。統一を果たしたドイツは、旧東ドイツ地域が抱えていた低成長や高い失業率といった“負の遺産”を見事に克服し、欧州屈指の経済大国へ飛躍を遂げました。1990年代から2000年代初頭にかけては「欧州の病人」などと揶揄される存在でしたが、ゲアハルト・シュレーダー前首相時代に大胆な労働市場改革に取り組んだことなどが奏功。後継のアンゲラ・メルケル首相の時代になって、「奇跡の回復」を実現しました。そのドイツが今、試練に直面しています。同国の変調は欧州連合(EU)圏、ひいては世界全体の経済にも影響を及ぼしかねません。ドイツで何が起きているのでしょうか。
訪日客「5.5%減」よりも深刻、日本経済をむしばむ“病巣”の正体
2020年の経済・株式市場はどこに向かう?
11月20日に発表された10月分の訪日外客数は前年同月比-5.5%と、8月分と同様に昨年の実績を下回りました。7月まで訪日客は順調に伸びていましたが、8月から日韓関係の悪化で韓国からの訪日客が前年から半分程度に激減したことが、訪日客数全体を押し下げました。また10月は、大型台風が到来したことも大きく影響したとみられます。一方で、ラグビーワールドカップ開催の効果でイギリスなどからの訪日客は伸びました。訪日客数は2012年には年間853万人でしたが、安倍政権が繰り出したさまざまな政策対応で2013年から年々増え、2018年には3,119万人まで急拡大。2019年に入っても、7月まで同約+5%のペースで順調に伸びていました。しかし、8月から2018年平均を下回る水準に減少しています。10月の訪日客減少には大型台風の悪影響があったため、11月以降はやや持ち直すとみられますが、2019年年間の訪日客数は+2〜3%程度の緩やかな伸びにとどまりそうです。
投資初級者が見落としがち、「減益決算なのに株価上昇」のカラクリ
景気敏感株・コマツの最新決算から考える
10月下旬から11月中旬にかけて、日本企業の2019年7~9月期決算が発表されました。全体としては厳しい内容でしたが、業種別に見ると“まだら模様”の様相でした。一般的に、業績が芳しくなければ、その後の株価の動きも冴えない展開になりがち。しかし、11月に入ってからの日経平均株価は2万3,000円台を回復し、年初来高値を更新しています。いったい、どんなカラクリが潜んでいるのでしょうか。景気敏感株の代名詞である小松製作所(コマツ、証券コード:6301)を例に、考えてみます。
大統領選がリスクオン相場を誘発?「2020年のドル円相場」はどうなるのか
来年の想定シナリオは円高?円安?
残り1ヵ月半となった2019年を振り返ると、金融市場のキーワードは「不確実性」だったと言えそうです。英国のEU(欧州連合)離脱をめぐる混乱もさることながら、やはり大きな関心を集めたのは米中貿易摩擦の成り行き。米中両国が対立と融和を繰り返しつつ、結局、問題の解決は先送りされてきました。両首脳が一時休戦で合意した後も、ドナルド・トランプ米大統領が中国製品に対する関税引き上げを発表し、市場の失望を誘ったこともありました。それでは、このような「不確実性」の時代は2020年も続くのでしょうか。鬼が笑わない程度に、足元の政治・経済情勢からドル円相場の先行きを見通してみます。