はじめに

NISA口座を活用して資産形成を始める方が年々増えています。日本証券業協会によると、2024年12月末時点でNISAの口座数は2,560万口座、2023年12月末と比較して1年間で436万口座も増加しました。「NISAで積み立て投資を始めたけれど、いつ売却するのが正解なのだろう?」と悩んでいる方が多いのではないでしょうか。

投資信託の売却タイミングは、利益が出た時や急激な下落時などがあげられますが、長期的な成果を目指すなら、単に現在の価格だけを基準に判断しないことが大切です。特に、価格が下落したからといって慌てて売却することは避けるべきですし、逆に下落局面を「買い増しのチャンス」と捉える考え方もあります。では、NISAで積立投資をしている場合、売却タイミングをどのように考えると良いのでしょうか。


売却するタイミングは、お金が必要になった時

結論からお伝えすると、積立投資のベストな売却タイミングは「お金が必要になった時」です。投資信託は「安く買って高く売る」ことで利益が出ますが、誰しも「一番高い時に売りたい」と思いながらも、そのタイミングを事前に見極めることは誰にもできません。

筆者自身も15年ほど前に積立投資を始め、価格が上昇したことが嬉しく、数年も経たずに売却してしまった経験があります。日経平均に連動する投資信託でしたが、今振り返ると、あのまま継続していれば資産は大きく増えていたはずです。

積立投資を始めた目的は何でしょうか。おそらく多くの方が老後資金や子供の教育費など、中長期的な目標をお持ちではないでしょうか。積立投資は「長く続ける」ことによって成果が出やすくなりますので、保有している投資信託は基本的には売らずに持ち続け、「お金が必要になった時に必要な分を売却する」スタンスが正解だと考えます。

たとえば、教育費や自宅の購入などライフイベントにより、資金を確保する必要がある場合に必要な分だけ売却するというように、目的が明確であれば、売却の判断もしやすくなります。一方で、短期的な値動きや感情に流されて売却することは避けるべきです。市場の上昇局面で利益確定を急いだり、下落局面で恐怖心から損切りをしたりすると、たいていは本来得られるべき長期的な成果を逃してしまいます。最も利益が出るタイミングは誰にも分からない、ということを心に留めておきましょう。

もったいない売却パターン

積立投資をしている方の保有期間は意外と短い傾向があります。たとえば人気がある投資信託で、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の平均保有期間は、QUICK資産運用研究所の推計によると、それぞれ2024年末時点で2.01年・2.31年です。

あくまで投資家全員の保有期間を平均化した数値のため、個々の投資家の保有期間とは異なりますが、意外と短く感じられたのではないかと思います。短期での利益を狙うのであれば問題ないのですが、長期投資を前提にしている場合は、非常にもったいない選択です。当初はコツコツと継続するつもりで積立投資を始めたのに、売却してしまう理由とはどのようなものでしょうか。

1. 利益確定のための売却
資産の価格が上昇し、利益が出たタイミングで「今のうちに利益を確定しておこう」と考えて売却するケースです。もちろん、ポートフォリオ全体のリバランスや、新たな投資機会への資金移動などに役立つことがありますが、利益確定を急ぎすぎると、その後のさらなる上昇を逃す可能性があります。目先の利益を確定させたいために、中長期的に大きな成果を得るチャンスを逃してしまうのは非常にもったいないといえます。長期での資産形成を目指すのであれば、安易な利益確定はおすすめできません。

2. 価格下落に耐えられず売却
資産の価格が下落した際に、「これ以上損したくない」と売却してしまうケースです。過去には20%〜30%程度の暴落が5〜10年に1度発生しており、50%〜60%程度の暴落もありました。プロスペクト理論と呼ばれる行動経済学の理論によると、人間は損失の痛みを利益の喜びよりも2.25倍強く感じるといわれており、冷静な判断が難しくなりがちです。

積立投資は価格が下がった時こそ口数を多く買えるチャンスと考え、下落時も淡々と積み立てを続けることが、長期的な成果につながります。

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