はじめに
子どもが育つと家計も育つ
現在、ご相談者さんの世帯の手取り年収は、月々48万円×12ヶ月+ボーナス220万円=796万円です。それに対する世帯の支出は、毎月の支出32万円×12ヶ月+特別支出40万円=年間424万円。つまり、単純計算すると、「年収-支出=372万円」が1年間で貯まります。さらに、児童手当(年18万円)や配当金(年18万円)を足し合わせると、年間貯蓄可能額は408万円です。
すでに1,800万円の貯蓄があるため、現在は使わなかったお金をすべて投資に回し、投資の残高も1,200万円あります。
年収の増加も期待できる状況で、このまま順調にいけば、セミリタイアの実現は近いようにも感じますが、いくつか落とし穴があります。そのひとつが子育てにかかる費用です。子育てというと教育費が一番に頭に浮かびますが、子どもの成長に伴って生活費が上昇することも織り込んでおきましょう。
現在の年間支出424万円のうち、住居費114万円と奨学金の返済12万円を差し引いた298万円には、毎月かかる基本生活費(食費・水道光熱費・保険料・通信費・娯楽費・医療費・日用品費)と、年単位でかかる特別費(旅行・家具家電・誕生日祝いなど)が含まれています。
内訳を見ながら想像してみてください。夫婦2人暮らしと0歳児のお子さんで暮らす現在と、お子さん2人が中高生になった時では、家計の状況がずいぶん変わると思いませんか? 人数が増えると、携帯代も外食費も家族旅行費用も人数分必要になりますし、成長すればよく食べるようになり、お小遣いも必要です。生活費の上昇分として、今回は出産した年に対前年比20%増、そのほかの年は毎年2%増として生活費を増やしています。
なお、昨今のコメ価格の上昇のように、世の中的な食費の上昇、物価上昇については、給与の上昇や金融資産の上昇で吸収すると考えて、ここでは計算に含んでいません。反対に、2人のお子さんが社会人として独り立ちする年には、それぞれ生活費を対前年比20%減としています。
マイホームは、維持管理費も見込んでおく
次は、「4,500万円のマイホーム」について考えていきましょう。お子さんが2人の場合、下の子が誕生した後、上の子が小学生になる前に購入する方が多いので、5年後にマイホームを購入する設定で計算しています。
住宅購入時に金融資産残高は5,000万円を超えているため、4500万円(諸費用込み)を一括で支払うことも可能ですが、今回は頭金2,000万円を家計から出し、残りの2,500万円を25年(300ヶ月)ローンとする設定としました。
この設定にした理由は大きく2つあります。40歳であくせく働かないセミリタイア生活をすると考えると、頭金を入れてセミリタイア後の月々の返済負担を減らしたいと考えました。一方で、ご夫婦にとって金融資産の成長や配当収入はセミリタイア後の大きな収入源となります。この2つのバランスを取る意味で今回の設定としました。
金利2%の場合、1ヶ月あたりのローン返済額は約10.6万円、ご相談者さんが61歳、ご主人が60歳の時に完済予定となります。繰り上げ返済などしない場合、2,500万円の借入に対して、総返済額は3,179万円です。
住宅購入資金の目途が立ったところで、マイホームの維持管理費用についても考えておきましょう。マンションを購入する場合には、月々修繕積立金と管理費を支払います。広さや築年数、世帯数などにもよりますが、両方で3万円前後かかるでしょうか。
戸建を購入する場合には、修繕積立金や管理費が無い代わりに、外壁塗装や屋根の修理などを自分で行うことになります。修繕時には一度に100万円前後のお金が出ていくことになるでしょう。また、マンションでも戸建てでも、火災保険や地震保険の保険料、固定資産税の支払いなども必要になります。
住宅ローン減税が続いていれば、購入後10年間もしくは13年間は、これらの支出と住宅ローン減税の還付で概ね相殺できますが、減税終了後は家計からの特別支出を多めに見込んでおきましょう。