はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

資産運用の一環として投資用不動産の購入を検討中です。現在、保有しているのはペーパーアセットのみです。国内外のREIT投信は総資産の3%ほど保有しています。預金と国内債券系の資産で総資産の80%を占めるため、都内23区でワンルームマンションを購入するか、海外で不動産投資をするか検討中です。予算としては総資産(総額は準富裕層の資産規模)の30%程度を考えています。
(40代前半 既婚・子供1人 男性)


内藤: ご質問ありがとうございます。現在は安全資産で80%ということですから、資産配分のなかで外貨や実物不動産などのリスク資産を増やしていくことは賢明な選択でしょう。

イールドギャップに注意

ただし、資産配分を考える際に実物資産が入ってくるとバランスが崩れやすくなるので注意が必要です。

自己資本比率については、イールドギャップ(不動産の想定利回りと借入金利との差)によって変わってくると思います。

金利が低い日本の場合、借入比率をあげても返済金額に大きな負担はありませんが、海外の場合は一般にイールドギャップが小さく、レバレッジをかければそれなりにリスクが高まっていくからです。

借入については資産全体のどのくらいになるのかを考え、将来金利が上昇したり、空室率が上昇したときにどうなるかという「ストレステスト」を行うことが大切です。

最悪の場合を想定し、例えば「金利が今より3%上昇、空室率が20%」といったシミュレーションをしてみましょう。

規制は国によって異なる

海外の投資対象国として、私は先進国ではアメリカ、新興国ではマレーシア、タイ、フィリピン、カンボジア、バングラデシュなどを候補先にしています。オーストラリアは、物件価格が比較的高く、外国人は新築物件しか買えないという規制があり、私は投資対象国からは除外しています。

マレーシアでは2014年から外国人の最低投資額が100万リンギット(約2,760万円)になりました。外国人の売買がやりにくくなってきている点に注意しましょう。

必ず現地に足を運ぶこと

賃貸に関しては、ほとんどの海外で可能ですが、問題は賃貸需要があるエリアかどうかです。例えばアメリカといっても、州によって経済環境は変わりますし、どの物件を選ぶかによっても賃貸環境は異なります。

税制については、現地の税制と日本の税制の両方を理解しておきましょう。

日本の居住者であれば、海外の不動産に関しても日本での確定申告が必要になります。これは、どの国の不動産を購入しても変わりません。

税務に関しては、現地と日本でそれぞれ税理士のような専門家に相談することを強くおすすめいたします。

そして投資対象国を絞り込んだら、必ず現地に行って、実際に物件を見学し、周辺の物件との相対的な比較を行う必要があります。購入後の管理も賃貸に影響します。海外の不動産投資の成否のカギは、現地で信頼できる管理会社を見つけられるかどうです。

海外不動産投資に関しては、『日本×世界で富を築く グローバル不動産投資』という書籍を出していますので、そちらもぜひ参考にしてください。

この記事の感想を教えてください。