はじめに

不正取引の金額は5710億円にもおよぶ

金融庁は7月7日、インターネット経由で証券口座が乗っ取られ不正取引された金額は、売却金額、買付金額を合わせて1月から6月末までで5710億円だったと発表しました。同期の累計の不正取引件数は7139件、不正アクセス件数は1万2758件でした。6月単月の不正取引件数は783件で、5月の2329件から大幅に減少しました。不正取引金額も5月の2105億円に対して、6月は1724億円減の381億円でした。減少はしたものの、なお不正取引が行われています。

同庁は、インターネット取引サービスでの不正アクセス・不正取引が多発していることを受け、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」等の一部改正案を公表しました。その中では、「インターネット取引に係るセキュリティ対 策を十分に講じるとともに、顧客に対する情報提供、啓発及び知 識の普及を図ることが重要である」という項目を追加し、不正防止対策を最優先の経営課題の一つとしました。

また、日本証券業協会は7月15日に「インターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドライン」の改正案を公表しました。相次ぐ証券口座乗っ取り被害を受け、「フィッシングに耐性のある多要素認証」を必須とする項目などを新たに盛り込みました。

顔や指紋を使った生体認証やPKIと呼ばれる暗号化技術など、高い安全性を備えた本人確認の手法が必須となります。なお、日本証券業協会の日比野隆司会長は、システムの安全性を高める投資がかさみ、ネット取引から撤退する証券会社が出る可能性も示唆しました。不正アクセスによる被害が発生した場合、顧客への補償をどのように行うかは、証券会社にとって大きな課題となっています。手数料の値下げ競争が続く中、セキュリティ対策が後手になったようにも感じます。

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