はじめに

過去の暴落に共通する条件

図
歴史的な暴落には、いずれも過剰な期待によって株価が実態以上に押し上げられた「バブル」の存在がありました。

1929年の「ウォール街の大暴落」は、投機熱の高まりと過剰な信用取引が背景となり、楽観一色の相場観が崩れ始め、パニック売りに発展しました。

1987年の「ブラックマンデー」は、株価が過熱した直後、コンピューターによる自動売買(プログラム・トレーディング)が連鎖的な売りを促進し、下落を拡大。1987年10月19日、ニューヨーク株式市場で、当時2200ドル台だった米ダウ工業株30種平均は1日にして500ドル超下落し、下落率は過去最大の約23%を記録しました。

2000年の「ドットコムバブル」では、収益基盤が不確かな企業にまで資金が集中し、NASDAQ総合指数は2000年3月のピーク(5,132.52ポイント)から、2002年10月までに約78%下落し、ITバブル崩壊の激しさを物語っています。

2008年の「リーマンショック」は、住宅ローン証券化商品への過度な資金集中(ポジションの傾き)と、サブプライム問題の見落としが、信用収縮と連鎖倒産を引き起こしました。

2020年の「コロナショック」は、未知のウィルスという外部ショックに加え、各国の経済停止が同時に起こる史上初の事態となりました。家計の現預金が1,031兆円と過去最高を記録するなど「金余り」の状況が続いた結果、実体経済との乖離にも関わらず、市場全体に高バリュエーションと安易な流動性志向が蔓延しました(家計預金データより)。一方で、NYダウは、2020年2月の史上最高値から急落し、急速にベアマーケットに転じ、金融市場に衝撃を与えました。

このように、市場急落には「バブル」と「ポジションの傾き」が密接に関係していますが、現実として暴落の予知は不可能です。しかし、過熱感を確認するだけでも、取れる対処は大きく変わります。

過熱感を測るチェックポイント

市場の過熱感を見極めるには、以下のような指標を確認することが有効です。

・過度なレバレッジの拡大
・信用取引残高の急増やデリバティブ建玉の偏り
・小型株や新興国株など特定セクターへの資金集中
・VIX指数(恐怖指数)の急低下

さらに、株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)が過去の平均や他資産に比べて極端な値になっていないかチェックします。市場が割高状態で多くの投資家が強気に傾いている場合、修正の反動が大きくなります。

また、好況にともなう賃金やインフレ率が 実態以上に上昇する局面 や、中央銀行の金融政策が緩和から引き締めへ転じるタイミングには警戒が必要です。

「割安株がなくなっている」「新規参入者が急増している」なども、上昇に強気な人が増えている過熱のシグナルと言えるでしょう。

分散投資と暴落後のチャンス活用

急落への備えとしては、分散投資と定期的なリバランスが基本です。特定資産への集中やリスク資産一辺倒の投資は、暴落時の損失拡大に直結します。

一方で、急落はチャンスでもあります。相場の熱狂期には保有比率の縮小やヘッジを検討し、冷静な局面では利益確定と現金比率の引き上げを行っておくと、暴落時に優良株を安く仕込むことが可能になります。

実際、2024年8月5日の“令和のブラックマンデー”と呼ばれる暴落時には、三井住友フィナンシャルグループ(8316)がストップ安(約8,162円、約15%安)となる局面もありました。暴落の底と言われるタイミングでは、優良株が大きく売られる場合があるからです。

歴史的にみると、市場が回復するまでには数カ月~数年程度かかることが多いですが、近年はその回復スピードが速まっているように感じます。だからこそ暴落局面で慌てて手放すことが最悪の結果となることも多いです。

暴落が一過性なのか、それとも構造的なものなのかを見極め、暴落前に早めに逃げることと、暴落後に仕込みのチャンスと捉えることが、あなたの資産形成のプラスになるのではないでしょうか。

この記事が少しでも皆様の投資の参考になれば幸いです。

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