はじめに

運用哲学が資金流入を持続させる

したがって、アクティブファンドでより良いリターンを実現するためには、資金流出をできるだけ防ぎ、加えて投資し続けてくれるロイヤリティーの高い投資家を集める必要があります。そして、そのためには多くの人を納得させられる「運用哲学」が必要になります。

「運用哲学に共感してもらう」→「その共感を軸にしてファンドを買ってもらうのと同時に長期保有してもらう」→「資金流出が抑えられる」→「リターンが向上する」という流れが必要不可欠なのです。この流れが何かしらの原因で断ち切られた時、資金流出が止まらなくなり、アクティブファンドの運用は厳しい状況に追い込まれます。

しかし一番大事なのは、その運用哲学をしっかり履行しているかどうかでしょう。どのアクティブファンドも、運用哲学や運用方針を掲げているので、それは誰にでも見ることはできるのですが、それを本当に運用の現場で履行できているのかどうかまでは、正直なところ分かりません。

そこで注目したいのが「売買高比率」です。これだけで、運用の現場にしっかり運用哲学が浸透できているかを100%把握できませんが、ある程度の参考値にはなります。この数値は運用報告書に掲載されているので、誰でも簡単に見ることができます。

売買高基準は1.0以下のものを

売買高比率が高いということは、頻繁にポートフォリオの入れ替えを行っていることを意味します。売買高比率には、「期中の株式売買金額」と「期中の平均組入株式時価総額」、そして、前者を後者で割って求められる「売買高比率」が記載されています。

期中とは、投資信託に設けられている決算日のうち、前決算日の翌営業日から今決算日までの日数を意味します。この間に売買された株式の金額と、この間の平均的な組入株式時価総額を比較すると、このファンドが期中に組入株式を何回転させたのかを、おおまかに把握できます。

アクティブファンドで売買高比率が極端に高い場合、その時々のマーケットに合わせて、組入銘柄をとっかえひっかえ売買している恐れがあります。ある意味、この手のアクティブファンドは、表面的には良い運用哲学を唱えていたとしても、運用の現場でそれが履行されていないと解釈できます。

売買高比率が2.0だと、ファンドに組み入れてある銘柄を全部売却して同額、買い直したことを意味します。絶対的な基準値はありませんが、おおむね1.0を下回る程度であれば、頻繁に売買しておらず、運用哲学が尊重された運用を行っていると考えられそうです。

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