はじめに

上方修正と、株価下落のねじれ

じつは今回の上方修正では、営業利益が従来の6,000~6,710百万円から、6,773~7,134百万円へ、純利益が4,833~5,141百万円に引き上げられていますが、同時に売上高の予想は下方修正しています。

背景には、物流業界でのプロジェクトの収益寄与が来期以降に後ずれすることや、飲食・小売業界の回復が見通せないことがあります。

決算翌日からの株価下落の要因は、まさにここにあります。つまり、業績悪化による株価下落ではなく、売上の伸びが鈍化したことで「成長の天井が見えたのではないか」という疑念が芽生えたのです。通常は、売上の伸びが鈍化していても、利益率が改善していれば好感されることが多いのですが、タイミーの場合は、営業利益の増加も、積極的な拡大の果実というよりは、不正対策やマーケティングコストの抑制による“守り”の結果と見なされたようです。

さらに、9月からのサービス運営方針の変更も、ネガティブに取られている可能性があります。これまで「業務当日のチェックイン時点」で成立としていた労働契約を、「求人応募完了時点」で成立する仕組みに改めました。これにより、24時間前以降のクライアント都合によるキャンセルには、休業手当の支払いが必要となります。これは「ワーカー保護」の強化であり、スポットワークの信頼性向上につながる一方、クライアント側の負担が増えることで、利用控えが起きる懸念も出てきます。

まとめると、成長をけん引してきた飲食業界などでの“減速”と相まって、「これまでのような勢いは続かないのでは?」という警戒感を市場に与えた可能性が高いと考えられます。

そして、タイミング悪く株価の逆風となったのは、モルガン・スタンレーMUFG証券が、タイミーを強気の「オーバーウエート」から中立の「イコールウエート」に格下げし、目標株価を2,300円から1,800円に減額したことです。ちなみに同証券は、3ヶ月前の6月18日に目標株価を2,200円から2,300円に引き上げていますので、機関投資家といえども、成長企業の見通しは難しいものだと分かります。

今後の鍵は新たな成長戦略

成長企業にとって最も大事なのは、数字以上に「これからどう伸びるのか」という“物語”が描けるかどうかです。タイミーがこの先も投資家の支持を得続けるには、再びワーカー・クライアント双方にとって不可欠な存在となるような、新たな成長戦略と、それを実行する力が試されます。

個人的には、小売業界でのコスト抑制による利用控えが気になるものの、建築業界や介護業界でのポテンシャルは大きいと考えています。ここからが、当社にとって第2成長期の入り口だと信じて、引き続き見守りたいと思います。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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