はじめに
11月10日、日本を代表する化粧品メーカー、資生堂(4911)とコーセー(4922)が決算発表を行いました。かつてはインバウンド需要で爆買いされていた日本ブランドの化粧品ですが、近年は中国や韓国コスメの台頭が著しく、なかなか低迷から抜け出せない状況が続いています。
そんな中での決算発表となりましたが、翌日の株価の反応は対照的でした。まずは、それぞれの決算内容と株価の反応を確認していきましょう。
資生堂
2025年12月期第3四半期決算は、売上高6,938億円(前年比-4%)、営業利益-333億円と赤字転落。さらに、通期の最終利益予想は、従来の黒字60億円から-520億円へと下方修正され、過去最大の最終赤字となる見込みです。要因は、買収した米ブランド「Drunk Elephant」の業績不振によるのれんの減損(-468億円)であり、この内容は新聞やニュースでも大きく報じられました。
ネガティブな内容にもかかわらず、翌日の株価は思ったほど下落せず、一時プラス圏に転じる場面も見られました。これは、いわゆる「悪材料出尽くし」として市場が受け止めた結果ともいえます。
資生堂は現在、大胆な構造改革を進めています。具体的には以下の4点です。
1. ブランドポートフォリオの再構築
採算の合わないブランドを整理・縮小し、プレミアムブランドへの集中投資を進行中。
2. 地域別戦略の見直し
米州での構造改革を最優先課題とし、販売チャネルの再編やオペレーションの簡素化を推進。
3. コスト構造改革
固定費の圧縮と変動費の最適化を進め、マーケティング費や物流費など販管費のコントロールを強化。
4. 人材配置の最適化と組織のスリム化
早期退職制度の導入や管理職層の見直しを進めており、先日の会見では新たに200人の削減も発表されました。
実際、第3四半期の営業利益は281億円と前年同期比148.5%増となっており、構造改革の効果が表れ始めていると解釈できます。また、コア営業利益の通期予想に対する進捗率は91.8%と高水準であり、通期達成も十分視野に入ります。
このタイミングで中期経営戦略も発表されており、「ブランド価値の最大化」と「コスト最適化」の方針のもと、2030年12月期までに年平均売上高成長率を2~5%、コア営業利益率を10%以上に引き上げる目標が掲げられました。未来に向けた道筋を明確に示したことも、投資家にとって安心材料となったようです。