はじめに
“働かない選択”もまた、前向きな人生の設計図
一方、すべての人にとって「働くこと」が幸福につながるわけではありません。筆者が出会ったある60歳の男性は、定年を機に「もう十分働いた」と言い切りました。
「これからは、仕事よりもやりたかった音楽に時間を使いたい。健康寿命を考えたら、残された時間のほうが貴重です」との言葉はとても印象的でした。
このように、健康や人生の残り時間を意識して“働かない選択”をする人も増えています。大切なのは、「働く」か「働かない」かという二択ではなく、自分の価値観に沿った選択をすること。経済的不安を整理したうえで、自分にとって何が満たされる生き方なのかを見極めることが、真の意味でのライフプランニングにつながります。
60代前半に求められる「働き方リデザイン」
60代前半で大切なのは、「働き続けること」そのものよりも、「どんな目的で、どんな形で働くか」を再定義することです。フルタイムにこだわらず、週数日の短時間勤務、専門スキルの再活用、地域活動など、社会とのゆるやかな接点を持ち続けることも、幸福度を高めます。
ファイナンシャルプランナーとしての視点でも、この世代こそ「生活費のために働く」から「人生を支えるために働く」への意識転換が重要だと考えます。働くことは“老後資金を減らさない手段”であると同時に、“生きがいを得る手段”でもあります。
一方で、仕事から離れることを恐れず、自分にとっての「豊かさの基準」を再定義することも、人生後半の重要なテーマです。筆者自身、多くの相談を通じて、「働くこと」も「働かないこと」も、どちらも人生の選択肢として尊いと感じています。
本記事が、これからの働き方やライフプランを考えるうえでの一助になれば幸いです。
参考文献
一般社団法人定年後研究所・公益財団法人ニッセイ聖隷健康福祉財団(2025)『60~70歳代 人生・仕事満足度調査 ~現役社員への教訓を紐解く~』
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