はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。
個人事業主として独立して約2年。年間売り上げは550万円程度ですが、IT系業種のため仕入等にかかる費用はほぼありません。資産は預貯金500万円です。現在、節税と老後資金のために「小規模企業共済」と「確定拠出年金」を検討中です。
ただ、これら2つは基本的に途中解約できないものですし、NISA口座も開設したので投資信託の運用も考えています。どのようなバランスで進めていけばよいのでしょうか? それとも投資に手を出すのはまだ早いですか?
(30代後半 独身 女性)
深野: ご質問ありがとうございます。
個人事業主として独立されて約2年、仕事が軌道に乗り始めたようでなによりですね。余裕が出てきて将来のことや節税などを模索するようになった時期でしょうか。
私も独立起業した身ですので、ご質問者の方の気持ちはよくわかります。早速、ご質問に回答することにしましょう。
資金調達できる手段を確保する
節税と老後資金の準備を兼ねて、小規模企業共済と個人型確定拠出年金を検討されているようですが、結論からいえば小規模企業共済を優先して利用すべきでしょう。
節税を考えられているので、どちらも掛け金は全額所得控除を利用できることはご存知かと思います。
違いとしては、小規模企業共済は利用する際に口座管理料等の手数料はかかりませんが、個人型確定拠出年金は毎年、口座管理料がかかります。
また小規模企業共済は緊急時に低利の融資を利用できますが、個人型確定拠出年金には融資制度がありません。
借り入れをするかしないかは別として、事業を行う者は保険の意味で低利で資金調達できるすべを確保しておいた方がよいと思われるからです。
さらに、個人事業主は勤労者と比較して将来受け取る公的年金額が少ないことから、リスクをとった運用を行う前に、安全確実な運用でベースとなる年金額をしっかり確保しておく必要があるのです。
個人型確定拠出年金でも、預貯金や保険型商品を利用すれば安全確実に年金を確保できますが、口座管理料がかかる分、小規模企業共済よりも利回りが劣ることになるのです。
小規模企業共済は1,000円から7万円を月額積み立てられますが、掛け金は途中で変更可能です。節税できるからといって、背伸びせずにはじめは堅実な金額から利用しましょう。
リスクを抑えた投資を意識せよ
また、NISA口座も開設し投資信託への投資を考えられているようですが、個人事業主は仕事でリスクをとっている分、資産運用ではリスクを抑えた投資を行った方がよいといえるでしょう。
資産は預貯金550万円程度との記載がありますが、年間の生活費や貯蓄のペースがわかりません。お住まいは賃貸なのか自己所有か。自己所有の場合、住宅ローンの有無も定かではありません。
ここからは推測になってしまいますが、独立して2年目ではまだまだ余裕があるとはいえない気がしてなりません。
IT系業種で仕入れなどがほとんどないため、粗利は大きいのでしょうが、ご年齢から考えると資産を含めて将来のための基礎固めをしっかりしておくべきだと思います。
まずは小規模企業共済を始め、余裕ができたら投資を始めるくらいの慎重さが必要である気がしてなりません。
病気やケガ、あるいは景気の変動によって仕事量が変わるリスクを考えれば、少なくとも生活費の2年から3年分程度の資産をまず確保しておいてはいかがでしょうか。健康に留意して、がんばってください。