はじめに
なぜ節約時代に高級腕時計は売れるの?
多くの人が家計の見直しを迫られる中、なぜ高級時計は売れ続けているのでしょう? それは、腕時計がもはや「贅沢品」ではなく”価値を保つモノ”として認識されつつあるからではないかと思います。とくにロレックスや、グランドセイコーなど一部のモデルは、中古市場で定価を上回る価格で取引されることも珍しくありません。
つまり、高級時計は、「買って終わり」の消費財ではなく、「育つ資産」「時間を超えて価値を持ち続けるもの」としての側面が強調されつつあります。わたし自身は、時計ではないですが、ジュエリーに同様の感覚を持っており、来年、再来年と価格が上がるのであれば、高額であっても、今、買っておこうかという気持ちになります。インフレ下では現金の価値が目減りするという不安もあり、現物資産へのシフトという意味合いも強いのではないでしょうか?
加えて「良いものを長く使う」ライフスタイルの広がりや、若年層による”所有の再評価”の流れも無視できません。じつは若者の間で、スマートウォッチにはないアナログ時計の美しさ、職人技、物語性などに人気が高まっており、新たな支持層が生まれているのも高級時計の盤石な人気を支えています。
今から高級腕時計ブームに乗るなら?
高級時計を買う代わりに、株式を買うとしたら、現状でどちらが魅力的かを考えます。
シチズン時計の株価は、12月10日に上場来高値1,360円を記録。10月以降、出来高を伴った力強い上昇トレンドにあります。それでもPERは14倍台と割安感がある水準。
一方のセイコーグループは、12月8日に過去数年の高値圏7,680円をつけており、年初から2倍以上に急騰。PERは19倍台と今後の成長期待は織り込みつつあります。
よって現時点で投資妙味があるのは、割安でかつ業績が好転中のシチズンだと思われます。もちろんセイコーグループも長期的に見れば非常に魅力的です。グランドセイコーの世界的評価は年々高まっており、ブランド価値を軸に高級時計市場で存在感を増していくポテンシャルは十分あります。ただし、今はやや加熱感があるため、次の押し目を待っての参入が賢明かもしれません。
ここのところ「2極化」という言葉をいろんな場面で耳にしますが、株式市場においても例外ではありません。節約志向の消費者を取り込むべく、他社より一円でも安く商品を提供することに注力する企業がある一方で、価格を超えた価値(文化・資産・ストーリー)を乗せたブランド商品で成長しようとする企業もあります。
2026年はますますこの「2極化」は拡大すると思います。いったいどちらのタイプに投資資金が集まるか、それもまた見応えのある戦いになりそうです。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。