はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

新しい年が始まりましたね。年初から家計簿を始める方はよくいらっしゃいますが、ほかにしておくとお得なお金の習慣はありますか? 昨年はとくになにもしていなかったのですが、例えば一家の医療費がそこそこの額になることもあるので、病院にかかった場合レシートを貯めておくとか、確定申告もしたほうがよさそうな気がしています。現在、副業はしていませんが、せっかくなので気をつけておきたいことを教えてください。
(30代前半 既婚・子供一人 女性)


野瀬: 新年おめでとうございます。実務的なことは後ほどご説明しますが、ぜひ心がけていただきたいのは「器」に気を付けることです。

意識したい「器」って何?

さて、器とはなんでしょうか?

例えば、冷蔵庫を新しく買うことになったとします。すると、その冷蔵庫の大きさが毎月の電気代、さらには食費にも影響を与えることになります。

大きな冷蔵庫であれば消費電力も大きいですし、スペースもあるので多くの食材を買ってしまいます。たくさん食材を買っても私たちの胃袋の大きさは変わらないので、結局は食べきれずに腐らせてしまうことになるかもしれません。

そう考えると、この冷蔵庫というものは家計の「器」と考えることができるのです。

グラスのサイズを決めると、そこに収まる水の量が決まるように、器を決めると家計がだいたい決まってしまうのです。

例えば、「車:ガソリン代、駐車場、税金」「冷蔵庫:電気代、食費」「クローゼット:衣料費、クリーニング代」、さらにはそれらの器ともいえる「マイホーム」を買う際には、それが“家計の器”になることを意識して、極力、器が小さいものを選ぶクセを付けるとよいでしょう。

こういう影響の大きな家計から変えていく意識が大切です。

普段から心がけたいこと

今回のご質問の方は副業や投資はされていないということですので、普段から心がけておくことは限られてきます。

1つ目はご指摘があった「医療費控除」の資料となる領収書などの準備、2つ目が「特定支出控除」を申請するための準備、最後が「ふるさと納税」でしょうか。

その3つについて簡単に心がけておくことをまとめてみます。

1:医療費控除で心がけておくこと

ご指摘にありましたように、お医者さんに支払った金額の領収書を整理しておくことが第一ですね。ただそれ以外にも忘れがちな点がありますので、以下に箇条書きにします。

・薬局で購入した薬もOK:「治療」に使ったのであれば風邪薬も対象です
・通院に使った交通費もOK:タクシーの領収書や電車運賃
・バスの場合はメモ
・生計を一つにしている人の分もOK
・「治療目的」であれば「はり灸」もOK

これらに注意して必要な領収書・メモをしっかり残しておいてください。生計をひとつにしている家族(一緒に暮らしていなくてもOK)を含めると、医療費はけっこうかさむものです。

あと一点、注意したいのはよく言われる「医療費控除の目安10万円」です。

これはよく知られた指標ですが、実は「例外」もあります。正しくは「10万円、もしくは所得の5%のうちどちらか低い方」です。つまり所得が低い方の場合は、年間の医療費が10万円未満でも医療費控除を受けることができます。

2:特定支出控除で心がけておくこと

次に普段から準備が必要なのが「特定支出控除」です。簡単にいうと「仕事に関係する支出はサラリーマンでも追加的にいくらかは経費として認めますよ」という制度です。その条件は以下の通り。

A)仕事に必要な、交通費・スーツ代・本・資格取得・交際費等であること
B)「給与所得控除」金額の1/2を超える金額部分であること
C)領収書があり、かつ給与を支払っている会社の承認があること

この(C)の条件があるために「事前準備」が必要になります。

領収書については、医療費の場合と考え方はほぼ同じなので説明は割愛します。面倒なのが給与支払い者の承認です。事前に決められた形式の承認が必要なので、会社の担当者と交渉しておきましょう。

資格取得や転居(仕事に必要なものに限りますが)、スーツ代、そして細かな書籍代となると給与所得控除の1/2を超えている人はけっこういらっしゃると思います。

会社にとって損にはならいため、お願いすればきちんと必要な書類を作成してくれるはずです。

3:ふるさと納税で心がけておくこと

最後が「ふるさと納税」です。これは、故郷だけでなく自分がなにか思い入れのある土地に「寄付」すると、その分税金を少し安くしてあげます、という制度です。

2,000円の自己負担があるため、金額的に必ずしも得にならない場合もありますが、自治体によっては特産品などの「お礼」をくれるところもあります。2,000円分以上のお礼をゲットして、お得なものにしてしまうのが王道でしょう。

ただ、ふるさと納税は1~12月までに行われた寄付が対象です。年内にしっかり考えて寄付をし、寄付先の自治体から証明書をもらっておく必要があります。

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