はじめに

「年金は目減りする」「年金はもらえなくなる」そうおっしゃる方が少なくありません。だからこそ、老後のために自助努力が必要と投資に励もうとするのですが、本当に公的年金はあてにならないのでしょうか?

今回は1月23日に発表された令和8年度の年金額改定を基に年金を解説していきます。


年金は本当に減り続けている? 過去10年の推移を検証

年金の代名詞のように使われる「目減り」という言葉ですが、実際公的年金額は毎年減り続けているのでしょうか?

これを解説するため、過去10年の老齢基礎年金の満額を比較します。老齢基礎年金とは、日本に住むすべての人が加入する国民年金から、高齢期の生活を守るために支給される年金のことを指します。

国民年金は20歳から60歳までの40年間、保険料を支払う義務があり、40年間保険料を納付した結果受け取れる金額を「満額」としています。そしてこの満額は、物価や賃金の変動に応じて毎年改定が行われます。

以下は今から10年前、平成29年度から先日発表されたばかりの令和8年度までの老齢基礎年金満額を比較した表です。厚生労働省が発表する形式に準じ、月額で表示しています。

もし「年金が目減り」するのであれば、過去10年間を比較した場合、老齢基礎年金の満額はどんどん減っていくはずですが、令和2年度までは増額、令和3年度と4年度は減額、その後の年金額は毎年増額されていることが分かります。

なぜ年金額は変わる? 改定の仕組み

では、老齢基礎年金の満額はどのように改定されるのでしょうか? 厚生労働省が発表した「令和8年度の年金額のお知らせ」からその理由を抜粋します。

まず総務省が発表する「令和7年平均の全国消費者物価指数」を踏まえ、法律の規定に基づき決定したと書かれています。

この法律の規定によると年金額は、物価の変動や名目手取り賃金の変動に応じて改定を行います。この名目手取り賃金というのは、給料から税金や社会保険料を差し引いた、物価変動を考慮しない実際に受け取る金額と思っていただければ良いでしょう。

保険料を負担する現役世代は、賃金で生活を成り立たせています。物価の上昇率が賃金の上昇率を上回ると、生活は厳しいですが、賃金の上昇率が物価の上昇率を上回ると生活は楽になります。物価上昇と賃金上昇の関係性はいくつかパターンが考えられますが、支え手である現役世代の生活実態に応じて年金額を調整しているとご理解ください。

では実際の数字を見ていきましょう。

令和7年の物価変動率は3.2%でした。この数字と名目手取り賃金変動率をまずは比較します。

名目手取り賃金変動率は、2年度前から4年度前までの3年間の平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と3年度前の可処分所得割合変化率(現在0%)を踏まえて計算します。

直近3年度平均の実質賃金変動率 -1.1%
前年の物価変動率        +3.2%
可処分所得割合変化率      +0.0%
名目手取り賃金変動率      +2.1%

以上より、物価変動率3.2%に対し、名目手取り賃金変動率は2.1%と物価上昇が賃金上昇を上回ったことになるので、年金額の改定は名目賃金変動率を用いることになります。

現役世代の賃金は物価上昇より上がらなかったので、高齢者の年金だけを物価上昇に合わせて増やさない、という意味です。支え手にも受け手にも配慮をしているといえるでしょう。

さらに、現在の年金額改定においては、「マクロ経済スライドによる調整」が行われています。これは、持続可能な年金制度を維持するために、今は若干年金の変動幅を抑制し年金財源を健全な状態に保とうとする対策です。

具体的には、私たちの平均余命の伸びに相当する調整率を0.3%とし、ここに保険料を負担する被保険者数の変化率を加味します。平均余命が伸びるのは、年金財源にとってはネガティブな要因です。これに対し、保険料を負担する被保険者数の変化率がどうなのかによって、抑制率を導いているのです。

令和8年度の平均余命の伸び率-0.3%、被保険者数の変化率は+0.1%だったので、マクロ経済スライド率は-0.2%です。そのため年金額は、名目賃金変動率の2.1%から0.2%抑制され1.9%の増額に留まったということになります。

厚生年金の方は若干マクロ経済スライド調整率の計算方法が異なり、令和8年度は-0.1%となりました。結果、老齢厚生年金額については、昨年度より2%増額されることが決定されました。

以上より「年金が目減り」するというのは誤解であることがお分かりいただけると思います。

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