はじめに
出産をした年は医療費が増えやすく、確定申告が必要かどうか、判断に迷うケースも多くみられます。 医療費控除の還付申告は5年前まで遡って手続きができるため、過去に申告しそびれた方も対象です。
本記事では、確定申告を検討した方がよいかどうかを整理したうえで、基本的な申請の流れや勘違いしやすいポイントを、チェックリスト形式で解説します。
出産後、確定申告するかどうか迷う理由
出産した年は、妊婦検診や出産・入院で医療費が増える一方、産休・育休により収入が減るケースが少なくありません。そのため、「今は働いてないから関係ない」と感じる方が多いようです。
また、出産育児一時金や、出産手当金など複数の給付があることで、「どこまでが医療費控除の対象?」「手間をかけて申請する意味があるの?」と疑問に感じる方もいます。しかし、医療費控除は、「医療費の金額」だけではなく、「誰が申告するか」で結果が変わることがあります。まずは仕組みを整理しましょう。
確定申告を検討した方がよい人
医療費控除は、1年間に支払った家族全員の医療費の実質負担額から、一定額を差し引いた金額を、所得から控除できる制度です。まずは、「確定申告をした方がいいのか」を判断するため基準をお伝えします。
医療費控除の基本的な仕組み
医療費控除の対象となるのは、次の金額を超えた部分です。
支払った医療費の合計-保険金などで補てんされる金額-10万円(※)=医療費控除額
※所得200万円未満の場合は「所得×5%」
この条件を満たす場合、確定申告をすることで、すでに納めた所得税の一部が還付される可能性があります。還付額は、医療費の内容や所得、誰が申告するかによって異なります。
所得があるかどうかも重要なポイント
医療費控除は、納めている所得税があってこそ、還付が生じる制度です。そのため、次の点もあわせて確認する必要があります。
・年の途中まで働き、給与収入があるか
・年末調整が行われているか
・源泉徴収票で、所得税が差し引かれているか
なお、出産後に受け取る出産手当金や育児休業給付金は、医療費控除の計算における所得には含まれません。一方で、産休前まで働いて給与収入がある場合は、その分について所得税が課税されているため、医療費控除を申告することで還付につながるケースもあります。
夫と妻、どちらで確定申告をするのが正解?
医療費控除は、医療を受けた本人だけではなく、「生計を一にする家族」の分をまとめて申告できます。重要なのは、クレジットカードや口座の名義ではなく、「世帯として誰の所得から控除するのが合理的か」という視点です。
日本の所得税は累進課税のため、所得が多い人ほど税率が高くなります。つまり、「夫婦のうち所得税率が高いほう(多く納税しているほう)」が申告したほうが、戻ってくる税金が多くなる可能性があります。
産休・育休に入ると、「働いていないから関係ない」と考えがちですが、夫が申告することで医療費控除の効果を十分に活かせるケースもあります。これは、出産に伴う確定申告では見落とされやすいポイントの一つです。
出産にかかった費用、どこまでが医療費控除の対象?
出産にかかった費用はすべて医療費控除の対象になる、と思われがちですが、実際には対象になるものと、ならないものがあります。まずは、出産に関係して「医療費控除の対象になる代表的なもの」を整理します。
・妊婦健診、分娩、入院費、入院中の食事代
・病院への交通費(電車・バス、緊急時のタクシー代)
・不妊治療の費用
・帝王切開などの保険診療部分
【対象外のもの】
・希望による差額ベッド代
・里帰り出産のための帰省費用
・自家用車のガソリン代・駐車場代
・入院用のパジャマや洗面具の購入代
●出産育児一時金:医療費を補てんする給付金にあたるため、医療費控除を計算する際は、支払った医療費から差し引いて考えます
●出産手当金や育児休業給付金:医療費の補てんではないため、医療費控除の計算上、差し引く必要はありません
帝王切開で出産した場合は、分娩費とは別に、保険診療として扱われる医療費が発生するケースがあります。この保険診療部分は医療費控除の対象となるため、給付金との対応関係を確認しながら整理することが大切です。