はじめに

都営新宿線・森下駅から徒歩数分。マンションや倉庫、工場が立ち並ぶ、いささか殺風景な下町の一角に突如、一面ガラス張りのオシャレな空間が現れます。

訪れたのは平日の昼間でしたが、中は大勢の人で賑わっています。彼らが談笑している少し奥に目をやると、そこには大きなドラム式洗濯機と乾燥機が3台ずつ置かれていました。

ここは1月5日にグランドオープンをした「喫茶ランドリー」という新しい形態の喫茶店。最近、カフェスペースを併設したコインランドリーが増えてきましたが、こちらのお店はあくまで喫茶店がメイン。ランドリーはオマケだそうです。

この空間の何が、平日の昼間から多くのお客さんを引き寄せるのでしょうか。取材してみると、店主の進めるステキな野望が浮かび上がってきました。


ランドリーもメニューも本格派

喫茶ランドリーに入って最初に目に飛び込んでくるのは、店の奥に鎮座した大きめのドラム式洗濯機です。これはエレクトロラックス社製のセミプロ仕様のもの。おしゃれ着洗いや80度のお湯洗いも可能になっています。

料金の支払いはカウンターでの手渡し。コイン式ではないので、一度料金を支払えば、自分が納得できるまで何度でも洗い直しができるとのこと。

備え付けの洗剤や柔軟剤は、国内外の複数のブランドを取りそろえています。ランドリーを利用した人は、店内に置かれているアイロンとミシンも使い放題と、お客さんの自由度はかなり高めです。


広々としたランドリースペース。洗濯をすればミシンやアイロンが使い放題に

どうしてもランドリーに目が行きがちですが、カフェメニューも充実しています。おすすめは、エアロプレスで1杯ずつ手作業で淹れてくれるコーヒー。最高ランクの茶葉を使ったダージリンも味わえます。

料金はいずれも単品だと450円、洗濯・乾燥とコーヒーのセットだと980円。もちろん飲食だけの利用も可能で、飲み物と軽食のセットは800円となっています。

広さ100平方メートルの店内に、座席は大きく分けて4種類が配置されています。一般的なフロア席のほか、PC作業に適した大テーブル席、洗濯機などが置かれた家事室、通り沿いのスペースで半地下になっているモグラ席があります。

デンマークのカフェから得た発想

この店舗を経営しているのは、「グランドレベル」という街づくりのコンサルティング会社。目指しているのは“街の家事室”を作ることだと、同社の田中元子社長は話します。

喫茶ランドリーが入っているのは、都営新宿線・森下駅とJR総武線・両国駅のほぼ中間地点に建つ、築55年のビルの1階部分。もともとは手袋の梱包作業場として使われていた空間です。


開放的なガラス窓が印象的な喫茶ランドリーの外観

今から1年ほど前、田中社長はこのビルを購入したオーナーから「建物の1階をどうすべきか」という相談を受けました。ビルから徒歩数分の場所に住んでいた田中社長は、周辺地域にとってプラスになる空間にしたいと考えました。

その時に思い浮かんだのが、デンマークの首都・コペンハーゲンで見た、ランドリーカフェでした。ランドリーは来店動機の1つに過ぎず、家族で来て、旦那さんがパソコン作業をしたり、奥さんが赤ちゃんをあやしながら洗濯をしたり、周辺住民の多様なニーズに応えられる施設になっていたそうです。

田中社長の提案は、すぐにオーナーに受け入れてもらえました。が、田中社長の考えていた業態は日本ではまだ馴染みのないもの。引き受けてくれる事業者を探す作業が難航しました。

じゃあ、自分たちでやってみるか。田中社長は当時、神田に構えていたオフィスを引き払い、会社をこのビルに移して、自ら喫茶ランドリーの経営に乗り出したのです。

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