はじめに

アメリカでトランプ氏が大統領選に勝利した2016年11月、世界の株式相場は大きく揺れました。当初、市場関係者の間では「世界経済の先行きが不透明になる」との見方が拡大。株価は一時大幅に下落したのです。ところが間もなく「トランプ氏の経済政策への期待感」が急拡大することに。結局相場は反騰(はんとう)し、持続的な株価上昇につながりました。この出来事は「トランプラリー」(Trump rally)と呼ばれています。

さて、ここで気になるのが「ラリー」(rally)という言葉。投資に詳しい方なら、この言葉が「相場の反騰」、すなわち「値下がり後の値上がり」を意味することをご存知でしょう。しかし一般的には、ラリーという言葉から「球技(卓球やテニスなど)のラリー」や「自動車のラリー」を想像する人のほうが多いように思います。ちなみに球技のラリーも、自動車のラリーも、相場のラリーも、いずれもrallyと綴(つづ)ります。ところがこれら三者のイメージは一見結びつきません。

さてトランプラリーのラリーは、なぜラリーなのでしょうか?そして球技・自動車・相場のラリーの共通点とは、いったい何なのでしょうか?


相場のラリー

本題の前に、相場用語のなかでラリーがいかに存在感がある言葉なのかを確認しておきましょう。相場用語のラリーには、トランプラリー以外にも数多くの複合語(○○ラリー)が存在します。

例えば「サンタクロースラリー」(Santa Claus rally)とは、米国の株式市場においてクリスマスから翌年1月にかけて株価が反騰しやすい傾向を意味します。これは12月上旬に節税対策を背景とする売り圧力が高まり、クリスマス以後にその影響が少なくなることが原因とされます。これは米株式市場におけるアノマリー(経験的法則)なのだそうです。

また「リリーフラリー」(relief rally)という言葉もあります。一時は下落していた相場が、悪材料の軽減(リリーフ)で反騰する現象をいいます。

このほかにも、日本語では自律反発・あや戻しとも表現される「テクニカルラリー」(technical rally)や、やはり日本語では戻り売りとも表現される「セルオンラリー」(sell on rally)など、相場用語には「○○ラリー」が数多く存在します。それだけ市場関係者の間では、ラリーという言葉がよく知られているのです。

中心的意味は「再び集まる」こと

そんなrallyという英単語ですが、その語源を辿っていくとフランス語のrallier(ラリエ)という単語に行き着きます。語形を観察するとre-(リ)とallier(アリエ)が組み合わさった形をしており、このうちre-が「再び」を、allierが「集結」を意味します。このためrallierは「再集結」を意味することになります。兵隊や部隊が再集結する場合などに使う言葉です。

一方、英語のrallyもこの意味を踏襲しており、基本的には「集結・集会」を意味します。複合語もたくさんあります。

例えばcampaign rallyやelection rallyといえば「選挙の決起集会」のこと。May Day rallyといえば「メーデーの集会」のこと。peace rallyといえば「平和集会」のこと。pep rallyといえば「スポーツの壮行会」のこと(pepは「元気づける」意)。political rallyといえば「政治集会」のこと。protest rallyといえば「抗議集会」を意味します。

そしてこれらのさまざまな集会には、共通して「散らばっていた人たちが再び集まる」イメージも存在するわけです。

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