はじめに
再び領主の元へ
実は自動車のラリーを「ラリー」と呼ぶ契機になった大会があります。世界3大ラリーのひとつ「ラリー・モンテカルロ」(Rallye Automobile Monte Carlo)がそうです。1911年から開催されているこの大会が「ラリー」を名乗ったことが、自動車競技としてのラリーの始まりでした。
このラリー・モンテカルロの「創設当時の競技形式」がちょっと独特なのです。というのもこの大会は、もともと「ヨーロッパ各地から参加者が出発して指定地点を通過しながら目的地のモナコ公国に向かう」イベントだったのです。これは自動車の主なオーナーであった富裕層をバカンスに呼び込む観光政策でもありました。この集合イベントはしばらく本大会の前座ステージとして続きましたが、現在では本編のレースとは別枠のイベント「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」として開催されています。――ただこれだけでは「集まる」だけで「再び集まる」ことにはなりませんね。
ラリー・モンテカルロがラリーを名乗った理由は、中世ヨーロッパの騎士のイメージを重ね合わせていたからだと思われます。平時は各地に散らばって訓練をしながら暮らしている騎士が、戦争の際には領主のもとに集うイメージです。実際中世ヨーロッパでは、各地の騎士が馬に乗ってどれだけ早く領主のもとに集まれるのか争う競技がありました。この「領主の元に再び集まる」イメージを継承しているため、自動車のラリーもまた「ラリー」なのです。
相場のラリーは「反騰」の意味
これでようやく、相場・球技・自動車のラリーがひとつの中核的意味でつながりました。以上のいずれも「再び集まる」「再び戻る」という共通のイメージを持っているのです。
余談ながら、ネット上に掲載されている一部の相場用語集では、相場のラリーについて「値動きが細かく上げ下げしながら上昇する様子」といった趣旨の説明をしているところもあります。
この説明のうち「細かく上げ下げしながら」の部分が、ひょっとしたら球技のイメージ(球が行ったり来たりするイメージ)に引っ張られているかもしれません。確かに現実の相場でも、そのほとんどの局面で相場が「細かく上げ下げしている」ので、この説明もあながち間違いではない気もします。とはいえラリーの中核的意味はあくまで「再び戻る(集まる)」ことにあります。そのことをこの機会にぜひ覚えておいてください。