はじめに
理由その2:貧者を食い物にするから
そして第2の理由は、一部のサービスやその運用が「貧者を食い物にしている」と批判されたことにあります。実は一般のネット書き込みで貧テックが登場する場合、その多くで「貧者を食い物にする」意味を持ちます。フィンテックを推進する立場から見ると、由々しい状況かもしれません。
ひとつ例を挙げましょう。昨年有名なフリマアプリで「紙幣の出品」が問題になりました。出品された紙幣は額面よりも大きな金額で購入できるよう設定されていました。クレジットカード(ショッピング枠)による早急な現金化を求める人々は、このような出品物に飛びついたのです。
このような現金化を必要とする人の多くは貧困層とされます。そこでネット利用者の間で、フリマアプリ(あるいはフリマアプリがそのような出品を許している運用状況)を貧テックと称して、これを揶揄する言説も広まったのです(のちにフリマアプリでの現金の出品は禁じられた)。
このほかにも、手元にある不用品の写真をアップするだけで即時査定と現金化を可能するスマホアプリも、一部で「貧者を食い物にしている」「これも貧テックなのでは?」などと揶揄されました。
「貧困ビジネス」という言葉
余談ながら、この意味での「貧テック」表現は、従前の概念であった「貧困ビジネス」の影響を受けているように思います。貧困ビジネスとは「貧者を食い物にするビジネス」のこと。2000年代の後半に登場した言葉なので、誕生から約10年が経過した概念となります。
具体的に貧困ビジネスと称される業態はさまざまです。例えば日雇い派遣、ゼロゼロ物件(敷金・礼金がない代わりに家賃延滞時に強制退去を行うなどの賃貸物件)、囲い屋(生活保護受給者の搾取を行うビジネス)、消費者金融などが貧困ビジネスの仲間であるとされています。
これらのビジネスにはいくつかの共通点もあります。まず貧困層をビジネスの対象としていること。また契約条件がサービス提供者に極めて有利であること。さらに貧困者の無知につけこんでいること、といった共通点です。
仮に以上のような貧困ビジネスへの印象が貧テックにも重なっているとするならば、フィンテックへの逆風は相当厳しいと考えざるを得ないでしょう。