はじめに
「働き方改革」の一環として「プレミアムフライデー(プレ金)」が導入されてから、明日で1年。導入当初は7割弱だった知名度も、今では100%近い人が認知するまで浸透しています。
しかし、認知度の高まりとは裏腹に、実際に月末金曜日に仕事を早めに切り上げられている人はごく一部にとどまるようです。ついには、あまりの不人気ぶりを逆手にとった販促キャンペーンまで登場する始末。
はたして、多くの職場では、どんな状況になっているのか。各社の意識調査を基に、ひも解いてみます。
知名度向上でも実施は広がらず
月末金曜日、15時頃に仕事を切り上げて、いつもとは違うプレミアムな生活を過ごす。そんな趣旨で、政府と経済界が共同で昨年2月に導入した個人消費喚起のためのキャンペーンが、プレ金です。
調査会社のインテージが実施した意識調査によると、導入当初は69.7%にとどまっていたプレ金の知名度は、足元では97.0%まで上昇。「内容まで知っている」と回答した人の割合も、1年前の28.2%から直近は62.8%と、34.6ポイント増加する結果となりました。
ただ一方で、勤務先がプレ金を「奨励・実施している」と回答した人の割合は11.0%。昨年2月時点の調査では10.5%だったので、ほとんど増えていませんでした。制度そのものは認知が進んだものの、実際に早く仕事を切り上げられる環境にある職場は増えていないのが現状のようです。
この奨励・実施状況を企業規模別で見てみると、どうでしょうか。従業員数1,000人以上の企業に勤める人では、20.6%が勤務先でプレ金が奨励・実施されていると回答。これに対して、100人未満の企業に勤める人だと、その割合は2.8%にとどまりました。
こうした傾向は従業員数が少ないほど顕著となっています。中小・零細企業になればなるほど、プレ金どころではない、という状況のようです。
名ばかり改革で実態は改善せず
そもそもプレ金は、「長時間労働の是正」や「柔軟な働き方がしやすい環境整備」などを掲げた、政府の働き方改革と表裏一体の関係にあります。働き方改革を進めることで業務の効率性が高まり、それによって月末金曜日に仕事を早めに切り上げられる、という立て付けです。
しかし、ソフトウエア開発会社のサイボウズが中間管理職の男女500人を対象に行った意識調査によると、多くの企業の実態がこうした理想とは大きくかけ離れている状況が浮かび上がります。
実際に勤務先で働き方改革が始まったと回答した人のうち、70%が「会社・部署の業務効率は上がっていない」と答えました。また、「プレ金などの実施日に早く帰るため、他の日に残業をしたことがある」という人は36%に上りました。
名ばかりの働き方改革によって実際の業務効率は改善していないにもかかわらず、プレ金だからということで早めに業務を切り上げることを迫られている職場が少なからず存在しているようです。
こうした現状で、最も割を食っているのが中間管理職です。
働き方改革が実施されている企業に勤める中間管理職の55%が、「働き方について上司と部下の意見の板挟みになっている」と答えました。また、プレ金など労働時間を制限する施策を成功させるために必要なこととして、88%が「業務効率の改善」と「意識改革」と回答しました。
実際の意見として、「会社は閉館時間を早めるだけで、劇的に仕事がやりやすくなったわけでもなく、その一方で計画数字は達成するように言われる」「業務も減らず、人も増えず、効率を上げる改善が人任せのため、ストレスを感じる」などがあったそうです。