はじめに

普段から為替相場の情報をご覧になっている人は、USD/JPYとか、EUR/USDとか、GBP/USDといった表記も見慣れていることでしょう。それぞれ円/ドル、ユーロ/ドル、ポンド/ドルの省略表記ですね。つまりこれらは為替レートを示しているわけです。このようなアルファベット3文字による通貨表記は、世界中で利用されています。

ちなみにUSDなどの略称をGoogleに入力すると、簡単に為替レートを表示できることをご存知でしょうか。例えばGoogleの検索窓に1 USD(注)と入力すると、その日の為替レート――例えば1ドル=105円といった情報――が表示されるのです(注:より確実には USD to JPY とするとよい)。

さて、このように国際的に使用されているJPY・USD・EUR・GBPなどの略称なのですが、いったい誰が、どういうルールで決めているのでしょうか? 今回は、お金の略称――すなわち通貨コード――について掘り下げてみます。前編の今回は、通貨コードの「仕組み」と「その仕組みが及ぼした意外な影響」について紹介します。


誰が決める?ISOが決めている

皆さんは「ISO 9000」とか「ISO 14000」といったキーワードをご覧になったことがあるでしょうか。ちなみにISO 9000とは品質管理の国際規格のこと。もうひとつのISO 14000は、環境マネジメントの国際規格のことです。

以上のような国際規格を決めているのが、ISO(アイエスオー/国際標準化機構)と呼ばれる国際機関です。そして今回注目しているJPY・USDなどの通貨コードも、ISOが決めているのです。

規格の名前は「ISO 4217」。この規格では3文字のアルファベットによるコードと、3桁の数字によるコードを定めています。例えば円の場合、アルファベットがJPY、数字が392と決まっています。このうち今回は「3文字のアルファベット」に限って話を進めることにします。

ちなみにISO 4217は、通貨をめぐる状況変化(通貨の廃止・新設など)に対応して規格内容を更新しています。その管理作業を担当しているのがメンテナンスエージェンシー(MA)と呼ばれる組織。フランス、米国、英国、南アフリカ、中国、カナダ、スイスといった各国の標準化組織などが参加しています。つまり「誰が決めているのか」のより詳しい答えは「各国の標準化組織などが話し合って決めている」となります。

JPYはJPとYの組み合わせ

通貨コードを誰が決めているか?は分かりました。では通貨コードは、どうやって決めているのでしょうか。言い換えると、円はどうしてJPYと表記するのでしょうか。

通貨コードにおける3文字のアルファベットは「2文字の国名・地域名」と「1文字の通貨名」に分けることができます。例えば円を意味するJPYの場合、JPの部分が国名である日本(Japan)を表しており、Yの部分が通貨名である円(Yen)を表しています。

同様のルールにより、米ドル(USD)は米国(US=United States)とドル(Dollar)の組み合わせ。英ポンド(GBP)は英国(GB=Great Britain/UK=United Kingdom ではない点に注意)とポンド(Pound)の組み合わせということになります。

この国名を表す2文字の中には、日本人には分かりにくいものも存在します。その一つが、スイス・フランを表すCHFという通貨コード。以上のルールに従えば、CHが国名で、Fが通貨名ということになります。しかしスイス(仏語:Suisse)=CHという連想がピンと来ません。実はこのCHはラテン語のConfœderatio Helvetica(ヘルヴェティア連邦=スイス人の連邦)を略したものなのだそうです。

このほか南アフリカ・ランドを表すZARという通貨コードも、なかなかの曲者。この場合ZAが国名で、Rが通貨名となりますが、南アフリカ(South Africa)=ZAがピンときません。これはオランダ語(欧州から南アに最初に入植したのがオランダ人だった)で南アフリカを意味するZuid-Afrikaanseが由来です。

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