はじめに

ビットコインの略称は?

さて冒頭で筆者は「通貨コードの仕組みが及ぼした意外な影響」があると述べました。実は通貨コードの命名規則が、仮想通貨のひとつであるビットコイン(bitcoin)の略称に影響を与えているのです。

現在、ビットコインの略称(または通貨単位)には二つの派閥があります。メジャーなのはBTCという略称。執筆時にGoogle検索したところ、約2600万件のページを発見できました。そしてもうひとつ存在する略称がXBTというもの。Google検索では約440万件のページを発見できました。BTCほどメジャーではないものの、XBTもそこそこの用例が存在する略称です。

このXBTの先頭がXであることが、まさに「通貨コードの仕組みが及ぼした影響」なのです。つまりビットコインは「国・地域に関係なく利用できる通貨」だから、Xで始まる略称・XBTを持っているのです。

このXBTは、通貨コード(ISO 4217)とは無関係に命名された略称に過ぎません。とはいえ、ISO 4217の既存コードに被らない命名であることが興味深いところです。ビットコインのコミュニティは、通貨コードの「Xルール」だけでなく「かぶり」も気にして命名を行ったのかもしれません。仮にISO(国際標準化機構)がビットコインの通貨コード化に乗り出すようなことがあっても、これなら混乱は少なくて済みそうです。

そのほかの仮想通貨は?

こうなると気になるのが、他の仮想通貨の動向でしょう。注目すべきポイントは「ほかの仮想通貨の略称もXで始まるのか?」そして「既存の通貨コードとかぶっているのか?」といったところでしょうか。

このうち「Xで始まるのか?」の答えは「通貨による」となります。

確かにXで始まる略称もあります。リップルの「XRP」、モネロの「XMR」、ステラの「XLM」がそうです。

しかし筆者が確認した範囲では、Xで始まらない略称にも存在感がありました。メジャーな仮想通貨の中ではイーサリアムの「ETH」、ビットコインキャッシュの「BCH」、ライトコインの「LTC」、カルダノエイダコインの「ADA」、ネオの「NEO」、イオスの「EOS」が「非X系」でした。執筆時点における時価総額トップテンの仮想通貨のうち6通貨が非X系なのです。したがって仮想通貨の略称がXで始まるかどうかは「通貨による」ということになります。

一方、これらの略称は既存の通貨コードとかぶっているのでしょうか。

筆者個人としては「どうやら、かぶりを避けているっぽい」という印象を持っています。実際、本稿で登場した10種の仮想通貨に限れば、そのすべてが既存の通貨コードとかぶっていませんでした。これは「たまたま」なのかもしれませんが、非X系・仮想通貨のコミュニティが通貨コードを気にしている可能性もあります。

ということで前編はここまで。次回は、通貨コードを観察することで見えてくる「国際経済の現代史」について紹介します。

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