はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する花輪陽子氏がお答えします。

昨年から社会人として働き始め、同時に一人暮らしも始めました。学生時代の貯蓄はほぼありません。両親からの仕送りもなしです。両親はあと2~3年で定年を迎えます。母が支払ってくれていた貯蓄付きの保険を引き継ぎ、来年満期を迎え100万円ほど入る予定です。現在、iDeCoか、つみたてNISA(もしくは両方)を始めようと思っていますが、月々の支出をこれ以上増やして大丈夫か不安で申し込めずにいます。1カ月の収支がプラスマイナスゼロになっても、これらを始めるべきでしょうか。

〈相談者プロフィール〉
・女性、24歳、未婚
・職業:公務員(教員)
・居住形態:賃貸
・住んでいる地域:神奈川県
・手取りの月収:22万円
・毎月の支出目安:約17万、貯蓄分を入れると約20万
・その他:今付き合っている彼と3〜5年以内に結婚する予定。結婚後のことは未定。


花輪: 投資を始めるのは6ヵ月分の生活費を貯めた後にしましょう。

毎月17万円で生活ができているので102万円を手元に作れた後ですね。そうすれば、病気や失業など万一の際の備えになるからです。生命保険の満期金の100万円が入れば、手元のお金が増えるので投資を始める余裕ができますね。

貯金が少ない間は“つみたてNISA”で投資

「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は原則60歳まで引き出しができませんが、「つみたてNISA」の場合はいつでも売却することが可能です。そのために、貯金が少ない間はつみたてNISAを中心に行っても良いですね。結婚資金が必要になった場合にも売却して使うことができます。

他方でiDeCoは完全に老後の備えとなり、老後まで引き出すことができないと思ってください。

現在支出が17万円、貯金が3万円、余裕資金が2万円ですが、ボーナスがあるならボーナスから臨時支出のやりくりができるかと思います。ボーナスがない、あるいは少ない場合は毎月の収入から臨時支出用の備えを作っておきたいです。

生活費の余裕度によって、余裕資金から投資にまわすのか、貯金にまわしている一部を投資にまわすのかを決めれば良いでしょう。

公的年金では足りない老後の生活費

老後のために最低限残しておきたいお金は、夫婦の場合で約2,500万円、単身の場合で約1,500万円程度です。

現在の高齢者の家計簿を見ても、公的年金ではすべての生活費を賄うことができず、平均的に毎月3万~5万円程度貯金を切り崩して生活をしているからです。65歳以降90歳まで生きるとすると、25年間で900万~1,500万円の生活費が不足し、予備費も1人当たり500万円程度欲しいからです。

この大金を育てるのに、ぜひ活用したいのがiDeCoです。公的年金制度に上乗せして給付を受け取れる私的年金制度で、2017年1月から原則として60歳未満のすべての人が利用できるようになりました。60歳まで毎月一定額を拠出して、自分が指定した金融商品で運用をし、それを老後資金に充てることができます。

時間を味方につけて少額からでもスタート

iDeCoのメリットは税制優遇が手厚いことです。拠出時(拠出した金額が全額所得控除され、所得税率が10%の人の場合は住民税と合わせて20%の節税効果となる)、運用時(一般的な預金の口座や証券口座では利益に対して約20%の税金がかかるが、この制度では非課税)、受取時(年金受け取りの場合は公的年金等控除が、一時金受け取りの場合は退職所得控除が適用される)の3段階で税制優遇が受けられます。

ただし、この制度の最大の注意点として、拠出したお金は原則60歳まで引き出せないという点が挙げられます。さらに、加入期間が10年未満だと受給開始が可能となる年齢が60歳ではなく61~65歳になる点も忘れてはいけません。

つみたてNISAの場合は定期・定額での積立投資に限定した制度で、年間40万円までの投資枠に対し、株式投資に対する収益(配当や売却益)が20年間非課税となる制度です。

例えば、余裕資金100万円程度ができた後、毎月の貯蓄3万~1万円をつみたてNISAにまわし、1万円をiDeCoにまわしても良いでしょう。毎年24万円を20年間積み立てると、利回りがゼロでも20年間で480万円になります。40年間なら960万円となり、節税効果も大きくなります。

余裕資金ができたら投資額を増やしていってもよいでしょう。積み立てることができる期間が長いので、期間というメリットを活かして少額からでも始めていきたいですね。

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