はじめに

修正申告に対する加算税を強化(2017年)

相続税の申告を行い、相続財産の過少申告や無申告があった場合、税務署による税務調査の対象となる可能性が高まります。そして、税務調査によって指摘された不足分の税金には過少申告や無申告の理由の悪質度に応じた加算税が加算されます。

※ただ、これまでは税務調査によって露見されるまでは、加算税(過少申告加算税)の対象となりませんでした。

税務調査の前には税務署から相手への事前通知が行われており、事前通知後から税務調査までの間の申告も加算税の対象外だったので、一部の人の間ではわざと相続財産を過少申告して税務署の反応を見て調整するようなことが行われていたり、税務調査の連絡があってから見直しを行い、税務調査で指摘されそうな事項が再発見されたら税務調査前に修正申告したり、ということがありました。

上記のようなことが問題視され、2017年以降は相続税申告後の申告は、税務調査の対象前であっても5%の加算税の対象となります。無申告加算税の場合は、5%から10%になります。

各国の税務当局間での情報交換の強化(2018年)

税に関する基本的な考え方では、租税権は「国家」に属するものとされています。

そのため資産の置き場所が徴税権の外にある海外資産への課税は、財産の把握も含めて難しさがありました。そうした事情から、資産の海外逃避などを活用したタックスヘイブン等は発達してきた側面もあります。

しかし、2008年のリーマンショック以降、各国財政が悪化する中でタックスヘイブンの存在(特に資産隠し)や海外取引を活用した節税・租税回避への批判が世界的に高まります。

そのような国際世論を背景に現在、各国の課税当局は海外資産へ課税を行うための連携を強化しています。

その動きの一つとして、各国の課税当局は自国内の金融機関が所有している外国人の口座情報を年に1回交換し合うこととなりました。イギリスやフランスなどの58カ国・地域は2017年からこの共有を開始し、日本を含めた36カ国・地域も2018年から共有の輪に加わります。

これは「共通報告基準:CRS:Common Reporting Standard)」と呼ばれ、国税庁が「非居住者」(個人・法人等)の口座を居住地国ごとに選別し、日本の金融機関から口座保有者の氏名・住所、納税者番号、口座残高、利子・配当等の年間受取総額等を報告を受け、外国の税務当局に対して年1回まとめて情報提供する、ということを各国間で行うものです。

これにより、今まで海外金融機関に多額の資金を入れたり海外口座を使い取引を行ッタリして、「日本の当局にはバレないだろう」と税務申告をしないできた人たちの財産情報が明るみになる可能性があります。

生命保険支払調書の対象拡大(2018年)

死亡保険金には「500万円×法定相続人数」の非課税枠がありますが、それを超える分に関しては相続税の申告の際に相続財産として相続税が掛かります。

この保険金の申告は多くの人が行ってきたのですが、保険金にはその他に、将来もらえる予定の保険金の相続という問題があります。つまり、保険契約を相続で引き継ぐ場合です。

保険の契約には財産価値があるとされるため、本来は相続時点の解約返戻金相当額で価値を算出し申告を行わなければなりません。しかし、この保険契約の相続には申告漏れが多いのです。

税務署はこのような事例の把握漏れを防ぐために、現行では税務署に通報されない契約者の変更情報を2018年から支払調書の提出対象に加え、保険契約相続の際の相続税についても周知を徹底する予定だそうです。


課税当局が予定している富裕層への監視・課税強化案ついて簡単にまとめてみました。相続税について気になっていた方などは参考にしてみてください。

(この記事は相続tokyoからの転載です)

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