はじめに

住宅価格が高止まりしている、と言われている中、家を買おうとは思っているけれど、なかなか踏み出せない方、購入後の多額のローンやその家に縛られた生活を続けることに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は女性から住宅購入についての相談を多く受けるファイナンシャルプランナー高山一恵さんと、より豊かで自由な住生活の実現を目指して調査研究を行っている「LIFULL HOME'S総研」の住宅コンサルタントの中山さんにインタビュー。ライフプランニングから考える住宅購入のタイミングや資産価値とは何か、誰もが気になる自分の理想の家を探す方法に関してアドバイスを伺いました。


家を購入した単身女性は、パートナーができるケースも!?

――前回は、年収が高くない独身女性でもマンションが買える事例を伝えました。記事を読んだ率直な感想を聞かせてください。

高山さん:私のところには、20代から40代の女性のお客さまが多く相談にいらっしゃるのですが、世代によってお金の価値観や使い方が違います。今回、30代の方が住宅を購入されていましたが、とても堅実な買い方をされていると思いました。バブル世代なら勢いで買うケースもありますが、30代は生まれたときから不景気なので、購入の仕方も堅実になるんだなと思いました。

中山さん:現在、住宅ローンの金利は極めて低い状態です。だから、年収がそれほど高くなくても住宅ローンを組めたら、10年間受けられる住宅ローン減税をうまく活用して希望条件に合う物件を購入しやすいと思います。物件の価格は若干上昇していますが、頭金をきちんと入れて、返済計画をきちんと立てれば30代独身女性でも購入は可能ですね。

余談ですが、単身の女性がマンションを購入した途端にパートナーができるケースはとても多いです。

高山さん:そう、すごく多いですよね。私のところにも購入した直後にパートナーができて結婚が決まった、2人で住むには狭いからどうしよう、という相談はとても多くあります。

中山さん:独身者のマンション購入あるあるなのですが、不思議ですよね。

高山さん:ある雑誌で、「稼げる女性はモテる」というデータを見ました。もしかしたら、家を購入できる経済力が魅力につながっているのかも知れないですね。

 ファイナンシャルプランナーの高山一恵さん

借り入れる額よりも、毎月の支払額に注意

――マンションを購入する際、自分に合った物件を見つけるポイントを教えてください。

中山さん:まずは資金計画です。3,000万円で売っているマンションの支払総額は3,000万円ではありません。仮に、1,000万円を頭金にしても2,000万円の住宅ローンには金利が付きます。加えて、固定資産税や都市計画税、修繕積立金、管理費などのランニングコストもあります。

ポイントは、年収などを入力してできるマンション購入のシミュレーションで表示される上限額で購入しないこと。転勤や転職、ライフステージの変化は必ずあるので、高額の長期ローンというリスクは取らないほうが無難です。

高山さん:今は、昔のように給料が右肩で上がる時代ではありません。ボーナスも必ず出ると保証はないので、予算やライフプランを考えるのは大切ですね。

ある女性のお客さまで、マンションを購入後に結婚が決まり、転勤になった旦那さんについて行くことになった方がいました。郊外にある広くて少し高めのマンションを購入してしまったため、借り手もつかず、売却もできずで、住んでいないのにローンを払っている状態です。

中山さん:それはつらいですね。よくライフステージを考えて広めの物件を選ぶケースが多くみられますが、私はそれを間違いだと思っています。

いつか子供ができたときのための子供部屋、両親が泊まりに来たときのための和室など、普段の生活には必要ないスペースは、ランニングコストを圧迫するだけ。仮に子供ができたとしても、子供部屋が必要になるのは小学校3年生くらいからなので、購入から10年間は、子供部屋は不要なんです。

高山さん:10年経てば、ライフステージや収入が変わっている可能性も十分ありますからね。部屋数の多い広い家を借りようとすると、郊外の交通利便性が悪い場所になりがちなので、今必要ない部屋数なら避けるべきだと思います。

それから住宅ローンで借りられる金額は税込みの収入で決定しますが、返すときは手取り金額から支払います。ここに乖離があるので注意すべきポイントですね。

中山さん:仰る通りで、借りる額よりも毎月の返済額はしっかり確認すべきですね。仮に毎月12万円のローンを支払っても、友人の結婚式や突然の出費にも耐えられるかどうか。切り詰めないと支払えない額であれば、いずれ資金はショートするでしょう。

そもそも3,000万円の買い物は人生でそう多くある出来事ではありません。だけど、住宅になると「3,000万円なら安い」と、金銭感覚は鈍りがちです。

高山さん:賃貸の場合は月々の賃料で選ぶので身の丈に合った物件を選べますが、住宅ローンは何千万円と高額なので、それが分かりにくくさせていますね。