はじめに
教育資金や住宅ローンの返済など、なにかと出費の多い40代。老後の準備なんてまだまだ無理と、考えることを先送りしている人も多いのではないでしょうか。
人生100年時代。定年を60歳と仮定すると、その先40年もの暮らしが待っています。厚生労働省が公表した「平成29年賃金構造基本統計調査」によると、男女問わず賃金がピークとなるのは50~54歳。50代後半からは役職定年や関連会社への出向で収入ダウンになる人も。
家計に余裕ができるまで先送りすると、老後の準備に費やす時間は10年を切ってしまいます。老後の準備は待ったなし。40歳をひとつの区切りとして、前倒しで準備できることは何か考えてみましょう。
20年後のライフデザインを考える
「老後のためにいくら用意をしておけば安心ですか?」
この質問は、FPである筆者に寄せられる1番多い質問であり、一番返答に困る質問です。なぜなら、老後の暮らしは十人十色。老後の夢やどのような生活をしたいかによって、準備するお金に違いが生じます。
20年後の生活を想像するのは難しいと思うかもしれませんが、持ち家なのか賃貸に住んでいるのか、車の買い替えや旅行の予定はあるのかなど40歳からイメージしておくことで、老後に必要なお金や備えておくべき知識が何か検討がつくようになってきます。
多くの人は退職後、年金に頼った生活を送っていくことになります。総務省統計局が発表した「家計調査報告(家計収支編)高齢単身無職世帯の家計収支-2017年」によると、高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の実収入は11万4027円。このうち社会保障給付は 10万7171円と収入の大半を公的年金が占めています。
一方で支出は15万4742円。単純計算でひと月4万円の不足です。60歳から100歳までの40年間だと、4万円 × 12ヵ月 × 40年 = 約1920万円 もの不足。高齢化が進むなか消費税の増税も予定されているので、より一層負担が大きくなることが見込まれます。
預貯金と「つみたてNISA」で不足分を補う
長生きをリスクにしないために、預貯金でお金の準備をするとなると40歳から60歳までの20年間で毎月必要な積立額は8万円。50歳からの10年間なら毎月必要な積立額は16万円となります。スタートが早ければ家計への負担が軽減できますが、それでも大きな金額ですね。
この不足分をほとんど金利の付かない預貯金で積み立てるのではなく、一部を「つみたてNISA」で運用するのも手です。つみたてNISAは、毎月決まった金額を投資信託などに積み立てるもので、対象となる商品は金融庁の定めた基準をクリアした商品となっています。また、売却益や配当金など投資から得られた利益に、購入した年から最長20年間税金がかからないところが魅力です。年間の投資上限額は40万円。毎月約3万3000円の積み立てができる計算です。
例えば、毎月3万3000円をつみたてNISAを利用し年利3%で運用できたとすると、40歳からの20年で約1083万円。不足額は1920万円 - 1083万円 = 837万円 です。
837万円を預貯金で20年かけて貯めるには、月々の貯蓄額は837万円 ÷(20年×12ヵ月)= 3万4875円となります。
毎月の積立額の合計は、つみたてNISA3万3000円 + 預貯金 3万4875円 = 6万7875円。すべてを預貯金で用意するより、1万2125円余裕ができる形になりました。
もっとも「つみたてNISA」で購入できる投資商品は、元本保証ではありません。貯蓄をすべて投資に振り分けず、貯蓄と投資のバランスを上手にとりながら、無理のない範囲で活用してください。
退職金の上乗せとしてiDeCoを活用する
個別相談時に退職金の額を聞いてみても、いくらもらえるか把握している人は稀で答えられない人がほとんどです。もし退職金が用意されているなら、その分毎月の積立を減らせるので就業規則や会社の上司に確認しておくことをお勧めします。けれども、退職金に過度に期待するのはやめておきましょう。知人は、会社の倒産で、あてにしていた退職金とコツコツ貯めていた会社の株式(持ち株)を失って途方に暮れていました。
そんな退職金や心許ない公的年金の上乗せとしてお勧めなのがiDeCo(個人型確定拠出年金)です。預金・保険・投資信託から自分で商品を選び、毎月積み立てで「じぶん年金」を作っていきます。掛け金の上限は自営業者や専業主婦(夫)など立場によって違うのですが、その掛け金全額が所得控除され、運用中の利益は非課税です。
60歳まで引き出せないのが難点ですが、一時金として一括で受け取る場合は「退職所得控除」が、年金のように分割して受け取る場合は「公的年金等控除」が利用できます。退職時期と年金を受け取る時期にタイムラグがあっても、収入が途切れるようなことがないような工夫としても使える制度だと言えるでしょう。