はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は横山光昭氏がお答えします。

将来に向けて、最近話題の「つみたてNISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を始めようと思います。というのも、老後資金や子どもの教育費、マイホーム資金を貯めるのに、複利の効果を利用して増やすのが一番良いのではないかと思ったからです。この2つは運用益も非課税でとてもお得だと思います。ただ、利用するのは初めてなので少し不安があります。

メリット、デメリット、商品選びなどを含め、どのように活用していくとよいのか教えてください。ちなみに、会社に企業型確定拠出年金制度がありますが、選択制ということでしたので自分は利用していません。

〈相談者プロフィール〉
・男性、36歳、既婚(妻:35歳・専業主婦)、子ども2人
・手取りの世帯年収:約465万円
・貯蓄:180万円


横山: ご質問ありがとうございます。iDeCoやつみたてNISAについて、ある程度知識はお持ちのようですね。

会社に企業型DCがあるなら、まずはその利用を

相談者さんは投資の経験はあるのでしょうか。もし、未経験だという場合は、さまざまな仕組みを使う前に、通常の課税口座で、普通に積立投資を試してみるところから始めてもよいかもしれません。

というのも、投資経験がない場合、始めてから「やはり自分には合っていなかった」と思うことがあります。仕組みを使ってしまうと、止めにくい場合もありますので、まずは普通の積立投資で“お試し”してみましょう。

もし、「投資が楽しい」とか「苦痛ではない」と思えたら、老後資金に向けてiDeCo、自由に引き出せる資金としてつみたてNISAを始めてみてもよいでしょう。

両方とも長期積み立て、分散投資ができる仕組みです。iDeCoは拠出時、運用時、受取時の税優遇がありますし、つみたてNISAは運用益が非課税です。

ただ、いろいろ考える前に、相談者さんの会社の選択制の企業型確定拠出年金(DC)制度の利用をまず検討してもよいと思います。DCは退職金制度なので、今のままではおそらく退職金は十分ではないと予想できるためです。

また、選択制で確定拠出年金を利用しないと、前払い年金制度を利用しているとされ、掛け金分が収入として支給されます。そして、その場合、標準報酬額が上がり、社会保険料が高くなる可能性があります。つまり、総合的に見ると、手取り額が減っているということにもなり得ます。

個人型(iDeCo)と企業型(DC)の違い

iDeCoは個人型ですので、自分で運営管理機関を選び、掛け金を拠出し、必要に応じ手数料を支払い運用していきます。

一方で、企業型は会社で契約している運営管理機関(銀行など)に限られることがデメリットですが、掛け金は会社から出ます。規約によっては、自分で追加の掛け金を払う「マッチング拠出」を認めているところや、手数料を負担してくれる会社もあります。

掛け金は基本会社の損金扱いですが、マッチング拠出を利用した場合、その金額は個人から所得控除されます。

確定拠出年金は長期間にわたる積立投資なので、運営管理機関への手数料は大きな負担です。それを会社で負担してもらえる場合が多いのが企業型のメリットといえます。

ただ、最近は個人型でも手数料が無料の運営管理機関も多くなっています。同時に、信託報酬が安い商品の取り扱いを売りにしていることもありますが、信託報酬が高い商品も一緒に扱っている場合がほとんどです。

「信託報酬が低い商品から選ぶ」ということを肝に銘じておかないと、うっかり高い商品を選んでしまうこともあるので注意が必要です。

価格変動型の商品で運用益を狙う

確定拠出年金は企業型でも個人型でも、元本確保型の商品が含まれています。定期預金や保険商品です。

今は資産形成を勧めたいと国も考えていますし、税優遇の面から見ても預金金利などはメリットが少ないもの。投資信託などの価格変動型を選び、運用益が出ることを目指しましょう。

以前は定期預金だった銀行の確定拠出年金のデフォルト商品をバランス型の投資信託にするなど、最近は銀行も投資を勧める動きが出てきています。少しずつ勉強して運用するのがベターです。

教育資金やマイホームの頭金はつみたてNISAで

確定拠出年金は60歳まで引き出せないことがデメリットですが、つみたてNISAにするといつでも引き出すことが可能です。

もちろん、相場によっては引き出せないと判断することもあるでしょうが、基本的には自由に使える資金にできます。60歳まで使えないお金ばかりですと大変な時もあるでしょうから、教育資金やマイホームの頭金など、必要な時に使えるお金として積み立てていってもよいと思います。

1年間の上限は40万円で、2037年まで利用できます。各年の掛け金の運用は20年間できます。金融庁のデータによると、運用を20年続けると、マイナスになったという人はいなく、ほとんどが2~6%の運用益を得ているのだそうです。

いろいろ使い分けができ、メリットも多い投資の仕組みですが、家計や生活を犠牲にしてまでやるものではありません。食費や日用品代、通信費などを見直して、これらの投資の仕組みを利用できるよう準備を整えられるとよいと思います。

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