はじめに

トレードの「根拠」を見失わないようにする

短期トレードに焦りは禁物

エントリーしたときの根拠が必ずあるはずです。しかし、ポジションを持っていると、自分のなかにさまざまな感情が沸き起こり、そしていつの間にか、その根拠を見失ってしまうことがあります。そんなときはエントリーの根拠とまったく違う理由でエグジットしてしまったりしがちです。

冷静になって客観的に振り返ってみると、いったい何をやりたかったのかが、自分自身でもよくわからない取引内容がそこに記録されているはずです。エントリーとエグジットの根拠に一貫性があるかどうか。これは相場という大海のなかで、自分を見失わないためにも、とても重要なことです。

当初、見込んでいたとおりに株価は上がっているのに、まったく違う根拠で、途中でエグジットしてしまった。これは自分を見失っていく一つのきっかけになりえます。そこで「失敗した」「もったいないことをしてしまった」という焦りが生まれ、次のトレードに影響を与えてしまうことがあります。とくに短期トレードであればあるほど、ここを疎かにしてしまいがちなので、意識して気をつけるようにしてください。

中長期投資は「運用の仕方」がカギ

短期トレードに比べると、中長期投資は状況を客観的に分析する時間的な余裕があります。つまり、中長期投資におけるメンタルの状態は、相場が引けた後の冷静でいられる時間帯の分析によって、ある程度コントロールしうるものだと思います。

ミクロからマクロまで、さまざまな情報を集め、それを分析しているうちに、徐々に冷静さが戻ってきます。中長期投資はメンタルをコントロールするのに必要な時間的猶予がある分、短期トレードよりも対応しやすいのです。

たとえば、中長期投資で、自分が考えているシナリオとは逆の方向に株価が動き、評価損が大きく膨らむことはあります。中長期投資の株式ディーラーは、ファンダメンタルズがこうで、決算内容はこうだから、業績変化率はこうなるというシナリオを描いたうえで、将来の株価を予測しますが、あくまでも予測ですから、はずれることもあります。そのとき大事なのは、なぜ予測と異なる株価になったのかの理由がわかっているかどうかです。

株価は、ファンダメンタルズや業績見通しだけを反映して動いているのではなく、そこには需給動向もあれば、M&Aなどのイベントによって株価が大きく跳ね上がるといったことも含め、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。

こうした要因が見えていれば、シナリオを修正するだけで済みます。シナリオを修正したうえで、それでもまだ保有し続けたほうが良いと判断できるなら、ロスカットせずに、そのままポジションを持ち続ければいいでしょう。いずれ株価は元の軌道に戻り、損失が回復することも十分に考えられます。

しかし、時にはまったく理由がわからないまま、株価が自分の想定しているのとは逆方向に進んでしまい、評価損が膨らむケースがあります。こういうときはむずかしい対応を迫られます。株価が逆方向に進んでいる理由がわからなければ、対処の仕方がわかりませんし、そもそも中長期投資ですから、一度ポジションをフラットにする、という対応も簡単にはできません。

自分のシナリオからはずれているのに、その理由がわからない場合には、当然どこでロスカットすればいいのかもわかりません。いくら比較的メンタルコントロールをしやすい中長期投資といえども、こういったときはイライラが止まらない状態になるでしょう。

したがって、中長期投資では、「運用の仕方」を工夫して、こういう状態が起きたときに致命傷にならないようにしておくことが大切です。そのような運用の仕方とは、ポートフォリオを分散させて、リスクを偏らせないことです。そうすることにより、メンタルコントロールができなくなるような状態に陥りづらくすることはできるはずです。

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