はじめに

採用活動で、実際に刈っている稲はどっち?

ただ採用活動の「実態」を鑑みるに、学生の早期確保を行う企業は、人材として「育つ前」「実る前」の学生を確保しているのかもしれません。早期の採用活動・就職活動が、学生の学習・研究活動を阻害するとも言われるためです。

その実態を踏まえるならば、企業による採用活動を青田刈りと呼んでも差し支えないのでは、という考え方もできそうです。ただこれはあくまで筆者の私見なので、あまり真に受けないでくださいね。

なお国語辞典の世界では、青田刈り=学生の早期確保の意味を認めるかどうかで立場が割れています。

例えば広辞苑では、青田刈りの二番目の意味に「青田買い(2)と同じ」と記しており、青田買いの二番目の意味には学生の早期確保の意味を載せています。つまり広辞苑は、認める派ですね。

一方、新明解国語辞典・第七版(三省堂)は、青田買いの二番目の意味に学生の早期確保の意味を載せたうえで「誤って、『青田刈り』とも言う」と記しています。つまり新明解国語辞典は、認めない派に属します。

高年齢ほど、青田刈り派が多い件

ところで青田買いと青田刈りには、少し面白い話もあります。

学生の早期確保の意味で青田刈りを用いる人は、なぜか中高年になるほど多くなるというのです。言葉の誤用にうるさいのは中高年世代とのイメージもありますが、それとはまったく逆の現象が起こっていることになります。

文化庁が実施した「平成26年度(2014年度)国語に関する世論調査」によると、学生の早期確保を意味する言葉として青田刈りだけを使うという人は調査対象(男女全年齢・2000人弱)の31.9%いました。10年前の同じ調査では34.2%だったので、10年の間に「誤用が減った」ことになります(あくまで青田刈りを「誤用」とするならばのお話ですが)。

ここで問題にしたいのは年代別の調査結果です。10代を除く成人世代のすべてで、青田買い派が、青田刈り派を上回っていたのですが(つまり「正しい」使い方の派閥が多数派だったのですが)、なぜか高い世代になればなるほど青田刈り派の割合(つまり「間違っている人」の割合)が大きくなるのです。

具体的には青田刈り派の割合が、20代で23.9%、30代では25.1%、40代では37.7%、50代では38.9%(最高値)、60代では31.6%、70代では35.0%となったのです。しかも70代に限って言えば、青田刈り派(35.0%)と青田買い派(38.8%)がわずか3.8ポイント差で拮抗するのです(青田刈り派がもっと多い50代でも、青田買い派は9.5ポイントも優位だった)。この拮抗は、他世代には見られない独自の傾向でした。

では、どうして70代では両派の拮抗が起こったのでしょうか?

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