はじめに
「住宅ローン減税を受けている間は繰上げ返済はしないほうがいいの?」とご相談いただくことがあります。モヤモヤしながらもどちらがいいのかわからないので、結局のところ何もしていないという声を聞くことも。
実際のところはどうなのか?一緒に考えて行きましょう。
住宅ローン減税制度とは?
住宅ローン減税(住宅ローン控除)制度は、毎年末の住宅ローン残高の1%が所得税の額から10年間控除される家計に嬉しい制度です(所得税から控除しきれない場合は住民税から一部控除されます)。
しかし、繰上げ返済をして住宅ローン残高が減ると所得税からの控除も減ってしまうことから「繰上げ返済するのは損なの?」と不安を感じる人も多いのです。
2通りの繰り上げ返済方法
繰上げ返済とは、通常の返済とは別にローンの元金の一部を返済することです。元金を返済するので元金に対応する利息部分の支払いがなくなり、総返済額を減らすメリットがあります。
繰上げ返済は「期間短縮型」と「返済額軽減型」から選ぶことができます。利息の軽減メリットが高いのは期間短縮型ですが、毎月の返済額が厳しい場合には、あえて返済額軽減型を勧めることもあります。筆者の場合、2回繰上げ返済を行いましたが、いずれも総返済額の圧縮メリットが高い期間短縮型を選び、総額500万円以上の利息を減らすことができました。
繰上げ返済と住宅ローン減税どちらを優先するべき?
では、実際に繰上げ返済をする際の2つのパターンを比べてみましょう。35年ローンで2,000万円の借入れをした場合、500万円の繰上げ返済を「最初の5年で毎年100万円ずつ返済するパターン」、「住宅ローン減税終了後に500万円を一括で返済するパターン」、どちらがお得なのかどうかを借入金利が1.3%と0.5%の場合でシミュレーションしてみました。
借り入れ条件: 35年ローンで当初10年間の金利は一定とする。繰上げ返済は「期間短縮型」を選択
<金利1.3%の場合>
繰上げ返済による利息軽減額 | 10年間の住宅ローン減税による控除額 | 住宅ローン減税+利息軽減の合計 | |
---|---|---|---|
繰上げ返済しない | 0円 | 約176万円 | 約176万円 |
繰上げ返済(毎年100万円ずつ5年間) | 約215万円(1) | 約134万円 | 約349万円 | 繰上げ返済(10年後に500万円) | 約155万円(2) | 約176万円 | 約331万円 |
※全てカシオ計算サイト、ローン返済、繰上げローン返済にて計算しました。
1)計算条件:借入金額2,000万円、35年、1.3%,借り入れ年月2018年6月、繰上げ返済100万を5年間(2018.12、2019.12、2020.12、2021.12、2022.12)2,145,357円
(2)計算条件:借入金額2,000万円、35年、1.3%,借り入れ年月2018年6月、繰上げ返済500万を2028年1月、1,552,120円
金利1.3%は2018年6月の35年固定金利と同レベル(フラット35返済期間 21-35年金利の範囲 年1.370%~年2.010%)です。ローン返済当初から100万円ずつ5年に渡り繰上げ返済を行った場合、10年目以降に500万円をまとめて繰上げ返済する場合と比べて、約60万円の利息軽減効果があります。
一方で、住宅ローン減税中に繰上げ返済することで、控除は約42万円少なくなります。トータルで見た場合、ローン返済当初から5年間に渡り100万円ずつ繰上げ返済を行うほうが、10年目以降まとめて500万円返済するより約18万円お得という結果になりました。
<金利0.5%の場合>
繰上げ返済による利息軽減額 | 10年間の住宅ローン減税による控除額 | 住宅ローン減税+利息軽減の合計 | |
---|---|---|---|
繰上げ返済しない | 0円 | 約173万円 | 約173万円 |
繰上げ返済(毎年100万円ずつ5年間) | 約75万円 (1) | 約133万円 | 約208万円 | 繰上げ返済(10年後に500万円) | 約55万円 (2) | 約173万円 | 約228万円 |
(1)計算条件:借入金額2,000万円、35年、0.5%,借り入れ年月2018年6月、繰上げ返済100万を5年間(2018.12、2019.12、2020.12、2021.12、2022.12)748,684円
(2)計算条件:借入金額2,000万円、35年、0.5%,借り入れ年月2018年6月、繰上げ返済500万を2028年1月、552,954円
借入金利0.5%は変動金利を想定しています。ローン返済当初から5年間で毎年100万円ずつの繰上げ返済を行なったほうが、10年後に500万円を一括で行なうより約20万円多い利息軽減効果があります。
一方で住宅ローン減税中に繰上げ返済をした場合、約40万円控除額が少なくなります。トータルで見ると、住宅ローン減税中に繰上げ返済を行わず、住宅ローン減税終了後に一括で500万円を繰上げ返済したほうが約20万円お得という結果になりました。