突然ですが「勧進相撲」(かんじんずもう)と「チャリティーライブ」にはある共通点があります。その共通点とは何でしょうか?

「その前に勧進相撲って何?」という方もいらっしゃると思いますが、その話は少しだけお待ちください。ここでは「現在の大相撲のルーツ」とだけ把握しておけば大丈夫です。

一方、「勧進相撲もチャリティーライブも、寄付を募るためのイベントでしょ?」と思った方もいることでしょう。こちらは大正解。後ほど詳しく述べますが、勧進相撲の本来の趣旨は募金にありました。もちろんチャリティーライブの目的も募金です。

ここで問題にしたいのは、勧進とチャリティーの、さらに根源的な意味のことです。なぜ勧進やチャリティーは、募金を意味するようになったのでしょうか? 両語の語源を探ると、そこには、もうひとつ別の共通点が見えてきます。


大相撲のルーツ「勧進相撲」

まず勧進相撲について掘り下げましょう。

勧進相撲とは、大相撲(創設は大正時代)の前身にあたる相撲興行のこと。ざっくり言えば、寺社で開催される相撲を指していました。これはあくまで募金ではなく営利を目的とした興行でした。

この勧進相撲の歴史はかなり古いもので、もともとは鎌倉時代の末期から室町時代にかけて成立したとされます。そして勧進相撲における当初の大きな目的が、寺社を建築・修繕するための募金でした。この募金行為を勧進と呼んだため、興行の方も勧進相撲と呼ばれるようになったのです。

現在でも、大相撲・地方巡業における主催者(地方自治体・商工会議所・個人など)を「勧進元」と呼ぶ習慣が残りますが、これも語源的には寄付を募る人を意味していました。

また勧進を名目とする興行は、相撲だけに限りませんでした。例えば勧進田楽(でんがく)、勧進猿楽(さるがく)、勧進大神楽、勧進能、勧進狂言、勧進歌舞伎などなど、ありとあらゆる種類の芸能について勧進名目の興行が存在していたのです。

勧進とは、実質的に「募金・募資」のことである

このように勧進とは、実質的に募金・募資を意味する言葉でした。寺社、仏像、橋や道路(社会基盤)などを作ったり直したりするために必要となるリソース(ヒト・モノ・カネ)を、民衆から募ることを意味したのです。もちろんこの行為には、寺社、つまり仏教が大きく関わっていました。

実際、かつての仏教界には、勧進(募金)業務を取り仕切る僧侶が存在していたほどです。いまどきの言葉でいえば、寺社専属のファンドレイザー(資金調達者)といったところでしょうか。このような僧侶は、勧進上人(しょうにん)、勧化僧(かんげそう、勧化は勧進の異称)、勧進比丘尼(びくに)、勧進聖(ひじり)、勧進坊(ぼう)などと呼ばれ、全国各地を回っては募金・募資を行っていたといいます。

ちなみに歌舞伎の演目としてよく知られる「勧進帳」は、彼らが持ち歩く募金・募資の「趣意書」を指していました。僧侶や山伏が各地でこれを読み上げて、民衆からの寄付・寄進を募ったのです。歌舞伎に登場する弁慶が、主君・義経を救うために読み上げた白紙の巻物には、そういう意味がありました。