はじめに
はじまりは家族のためのパンだった
「移住してきた当時はパン屋さんがなかったので、じゃあ自分でできるようになろうと思って、友達から酵母の起こし方を習ってパン作りを始めました。最初は家族の食べる分だけで、ぜんぜんおいしくなかったです(笑)。でも、食べることは日々のことで、やめるわけにはいかないので続けていたら、近所の方から『うちの分も一緒に焼いてくれない?』と声がかかるようになって。じゃあ何曜日に焼いて届けますねと、週に1回配達を始めました。だんだん件数が増えてきて、配達に行くとそこで話し込んで、終える頃には1日経っている感じでした(笑)」と澄さん。
澄さんのパンはどんどん評判を呼び、やがて街のレストランや自然食品店から声がかかるようになり、営業許可を取り委託販売をスタート。委託販売と並行して週1で自宅で販売するようになり、現在は委託販売を辞めて週2回で営業するようになりました。
配達時代は円のみで報酬を受け取っていましたが、自宅での営業を始める際に地域通貨を導入することに。
「もともと私は美大出身で機織りを仕事にしていて、どこかでパンの修業をしたわけではありませんでした。大学時代の友人にも、『何でパン屋?』と不思議がられます(笑)。だから、私のパンを食べていただくのは嬉しいけど、お金をいただくのは抵抗があったんです」
その抵抗感を和らげ、背中を押してくれたのが、夫の潤一さんが「トランジション藤野」という市民アクションで実験的にスタートさせた地域通貨「よろづ屋」でした。
なぜ、地域通貨を導入することが、澄さんの起業を後押ししたのか。
後半で、見えにくい地域の人の能力=地域資源に光を当てる「よろづ屋」の仕組みを解説しながら紹介します。
■後半:これもお金?地域通貨が変える人と街との関係性
ス・マートパン
住所:神奈川県相模原市緑区名倉534-1
営業日:水・木曜 10:30〜なくなり次第(〜9月いっぱい夏季休業)
https://sumart.exblog.jp