はじめに
企業の未来を予想してみると?
さて、このヒントから何が読み取れるのでしょう。「何かわかった人?」という質問に半分以上の子供たちの手が挙がります。
「自動車は、自動運転の技術が出てくるから、これからも売れるはずです。あと、全ての販売車が2050年までに電気自動車になると聞いたので、その点からも自動車の株価は上がりそうだと思いました」
「僕は、飲料メーカーの未来が一番安定していると思いました。なぜなら、暑いときは冷たい飲み物、寒いときは暖かい飲み物を売ればいいからです」最初は、会社の未来について考えた意見が出ました。
株価の上下に着目した子もいます。
「これから、新感覚のゲームが出てきそうだからゲーム会社に注目しました。でも、ゲームは好きな人と嫌いな人がいるし、ゲーム依存症の問題もあるから、株価は上がったり下がったりが激しいかもしれません」
多かったのは、プラス面とマイナス面に着目した子供たちです。
「私は、自動車会社のプラス面とマイナス面を考えました。プラス面は、日本の車はエコで世界的に有名ということ、マイナス面は、アメリカのトランプ大統領が自動車の輸入関税を高くすると言ったことです」
「飲料メーカーは、ビールの売り上げが下がっているけれど、カロリーゼロの透明な飲料がどんどん出ていて、誰でも飲める物も増えていると思います」
「ゲーム会社は段ボールを使ったゲームなどが出て、今までゲームに対してアンチだった人も囲い込めていると思ういます。でも一方では、少子化で子供が減るからゲーム自体は売れる数が減りそうです」
政治から経済まで、最近のニュースをきちんと理解している様子がうかがえますね。
ゲームの結果で株価が変わる
意見が出たところで、株券を購入し、休憩を挟んだらいよいよ後半戦。株価がどう変動するか、ゲームがスタートです。5つの提示された「未来の出来事」に対し、二択で未来を選んでいきます。株価が上がるのか、下がるのか、どちらになるかは、子供たちに引いてもらう黄色と青色のボール次第。正しく未来は予想できません。
最初の未来の出来事は、「日本国内の景気やアメリカの景気の変化を受けて、為替は…?」
円安なら黄色、円高なら青です。さあどちらのボールが良いのでしょうか。代表でボールを引く子をみんなで見守ります。
結果は、青色。円高でした。途端に子供たちからは「えー!」という声。自動車会社とゲーム会社の株価は、円高により売上げがダウンしてしまいました。続く、二問目、三問目もボールを引く度に「えー!」という声が続きます。残念ながら、3社の株価はどんどん下がっていきます。
マイナスが続くとドキドキしてくる子供たち。ようやく、株価が上がると「良かったー」という声が上がりました。
結果が出たところで、それぞれの問いで提示された各社の株価変動を計算し、再度、証券会社のスタッフのところへ並び、お金に換えてもらいます。
お金は子供たちの将来を実現するための道具
「お金が増えた人はいますか?」講師の小島さんの問いかけに、ほとんどの子供たちが手を挙げました。
最高額は1150円。元手が千円だったので、150円の利益となりました。
小島さんは話を続けます。「皆さん、たまたま増えたと思いますか?実は、株価というのは上がったり下がったりします。もし、反対のボールを引いたら反対の結果になったのです。景気というのは波のようなもので、良くなったり悪くなったりします。会社も急には大きくなりません。長い目で見て成長を捉えることが大切です。このことを長期投資といいます。大切なことですからよく覚えておいてください」
小学生のうちにここまで知る必要があるの?と驚かされますが、講師の小島さんが伝えたいことは単なる知識ではないといいます。
「早いうちにお金について知っておけば、無知なまま大人になることはないはずです。お金を子供たちの将来を実現するめの道具として、うまく使えるようになってほしい。今日の授業が何かしら子供たちの心に引っかかってくれたらよいなと思っています」
お金はどんな力を持っているのか、自分の将来をどう広げてくれるものなのか、この夏、家庭でも子供と話し合ってみませんか?
(文:編集部 村上亜紗子)