はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は高山一恵氏がお答えします。

10年後、夫54歳、妻50歳くらいで会社勤めを離れたいと考えています。その後は、世帯月収10万円くらいの仕事をしながら、のんびり好きなことをして暮らしたいです。そのため、現在の資産で実現できるのか、または足りない場合はいくら不足するのかを知りたいです。資産の内訳は以下の通りです。現在は、住宅ローンがないので月15万円程は貯金できています。よろしくお願いいたします。

【資産の内訳】
・金融資産:1,200万円 
・自宅不動産:2,900万円(住宅ローンは完済)
・IDeCo:月4.6万円(夫婦各2.3万円)
・つみたてNISA:月6万円
※iDeCoとつみたてNISAは今年の6月から始めました。

〈相談者プロフィール〉
・男性、44歳、既婚(妻:会社員)、子ども2人(高3・小6)
・職業:アルバイト
・居住形態:持ち家(マンション)
・居住地:東京都
・手取りの世帯月収:40万円
・毎月の支出目安:25万円
・総資産額:4,140万円


高山: ご質問ありがとうございます! ご相談者さんのように、早く仕事を辞めてのんびり暮らしたいという人は、実は多いのではないでしょうか。

とはいえ、今後少子高齢化の影響で将来の年金の先行きは不透明、加えて男女ともに平均寿命が延びている中、きちんとしたマネープランを立てておくことが必要です。今回はアーリーリタイアするための資金準備についてお話したいと思います。

50代でリタイア後、65歳までの必要資金は?

10年後にはリタイアしたいとのことですが、その頃には下のお子さんも成人されて、子育てもひと段落といったところですね。確かに、子どもが独立したあとの生活をどうしたいのか考えておくことは大切ですね。

では、ご希望通り、10年後にリタイアして暮らせるかどうか、ざっくりとした試算にはなりますが、見ていきましょう。

現在、年金が支給されるのは65歳からなので、奥様の年齢に合わせて計算すると、50歳で仕事を辞めた場合、15年間無年金になります。その間の生活費として、以下の金額が必要になります。

<無年金期間の生活費>
25万円(現在の生活費)×12ヵ月×15年間=4,500万円

リタイア後の50歳からは、月10万円程度の収入を得る予定のようなので、その分の収入を計算すると以下になります。

<無年金期間の収入>
10万円×12ヵ月×15年間=1,800万円

4,500万円から1,800万円を差し引くと、2,700万円となり、50歳〜65歳までの足りない金額を単純に計算すると、2,700万円ということになります。この不足分を金融資産から取り崩すわけですが、現在の金融資産を整理してみると、あくまでも予想ですが、以下になります。

<現在の金融資産>
・金融資産:1,200万円
・普通預金:月4.4万円
・つみたてNISA:月6万円
・iDeCo:月4.6万円

ちなみに、家は売却した場合の金額なので、ここでは資産に入れません。

これらの金融資産が10年後、どうなっているかですが、仮に1,200万円の金融資産を10年間1%で運用したとすると、10年後には約1,326万円。普通預金はほとんど利息がつかないので約528万円、つみたてNISA、iDeCoはともに3%の投資信託で運用したとして、10年後は、つみたてNISAは約838万円、iDeCoは約643万円(所得控除などは考慮していません)となります。ただし、iDeCoは60歳まで引き出すことができないので、50歳の段階で取り崩せる資産の合計は次の通りです。

<10年後に取り崩せる資産>
金融資産1,326万円+普通預金528万円+つみたてNISA838万円=2,692万円

50歳〜65歳までの足りない金額2,700万円から、取り崩しできる資産2,692万円を差し引くと、8万円足りないことになります。数字だけをみると、50歳〜65歳までは現状のままいけばなんとかなりそうですね。

65歳以降の資金計画も重要

上記に加えて、65歳以降の生活費も考える必要があります。

総務省の家計調査報告2017年によると、現在の60歳以上の人が受け取っている年金の金額は夫婦2人合わせて21万円程度とのこと。ですから、65歳以降も25万円の生活費がかかるとすると月4万円不足することになります。

仮に90歳まで生きると仮定して、65歳以降の不足金額を計算すると以下になります。

<65歳以降、受給年金以外で補填する金額>
4万円×12ヵ月×25年間=1,200万円

高齢になると、病気になったり、介護が必要になったりするケースが多く、医療費や介護費用として1人あたり500万円程度必要といわれています。夫婦2人合わせると1,000万円です。

iDeCoについては、50歳まで掛け金を拠出して、それ以降は掛け金を拠出せずにそれまでの積立資産を3%で運用したとすると、60歳の受け取り時には約864万円になります。65歳以降に不足する金額からiDeCoで受け取れる資金を差し引くと、次の通りです。

<65歳以降に不足する生活費>
(1,200万円+1,000万円)-約864万円=1,336万円

50歳〜65歳までの不足資金8万円と合わせると、1,344万円が不足することになります。詳細がわからないところもあるので、あくまでもざっくりとした計算ですが、現状では1,300万円程度足りないということになります。

長く働き続けられるスキルを獲得できるかがカギ

この状況を踏まえて対策としては、毎月の貯蓄額を増やす、運用の利回りを高くする、働く期間を延長する、リタイア後に想定している収入を増やすなどが考えられます。

ちなみに、いくら収入があれば現在の資産状況でも足りるかを計算してみたところ、65歳までの収入を毎月10万円から毎月18万円にすれば足りるようです。

ただし、今回の試算は、現在の年金制度が続いたと仮定した場合です。少子高齢化が加速する中、現在の年金制度が現状のまま続く可能性は低いといえます。将来受け取る年金の受給額が減額になったり、受給開始年齢が遅くなったりする可能も十分にあります。

70歳、80歳まで収入があればだいぶ違います。現役時代と同じように働かなくても、継続的に収入を得られるスキルを身につけておくことが大切といえそうです。

自分だけにしかできない知識や技術があれば、週2回〜3回働くなど、働き方を調整してもニーズはあるでしょう。今はインターネットやSNSなども発達していますし、固定観念にとらわれず、いろんな視点から考えてみるとよいかもしれませんね。

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