はじめに

トルコの通貨史(3)TRL→TRY

通貨コードについては、以前、本連載でも取り上げたことがありますね(参照:円はJPY、ドルはUSD、ビットコインは?通貨コードの仕組み)。日本円の場合はJPYと表記する、あの表記法です。

国際規格ISO 4217では、原則「国名2文字+通貨名1文字」のアルファベットによって、その通貨を表記する仕組みになっています。この仕組みをトルコリラに適用すると、トルコ(Turkey)を意味するTRと、リラ(lira)を意味するLの組み合わせで「TRL」となるはずです。

しかし共和国成立以後の通貨コードは、当初こそ「TRL」だったのに、現在では「TRY」に代わってしまいました。TRLがTRYに変わったのは、新トルコリラ(Yeni Türk Lirası)が登場した2005年のこと。突然登場したYは、おそらくYeni(新)のYなのでしょう。

実はこの変更劇は「通貨コードあるある」のひとつ。デノミネーション(通貨単位の切り下げ)が行われた通貨は、通貨コードも切り替わることになっているのです。他通貨でデノミが起こった場合も、メキシコペソの場合はMXPからMXNへ、ロシアルーブルの場合はRURからRUBへの変更が行われていました。

トルコの通貨史(4)デノミ以前とデノミ以降

そしてトルコリラの場合、2005年における新トルコリラの導入が、デノミを目的とした通貨切り替えでした。このときの切り替えレートは、1YTL(新トルコリラ)=100万TL(旧トルコリラ)だったといいます。トルコリラのインフレーションは1970年代から慢性的に続いていた現象でした。その蓄積がいかに凄まじかったのか、レートから実感できますね。

一方、通貨略称がYTLからTLに戻った2009年の場合、通貨コードの方はTRYのまま維持されました。これはデノミを伴わない「表面的な名称の変更」であったためでした。

つまり共和国以降のリラの歴史で、その表面的な名称は「三段階」の変化(トルコリラ/TL→新トルコリラ/YTL→トルコリラ/TL)を遂げているのに対して、通貨コードの方は「二段階」の変化(TRL→TRY)しか遂げていないことになります。これは通貨の実質的な区分が「二段階」しか存在していないことを意味するわけです。従ってトルコリラの歴史は、2009年のデノミ「以前」と「以後」に分ける方法が、分かりやすいのではないかと思います。

ということで、前編はここまでとしましょう。後編では「リラ」の語源などを紹介して、トルコリラの歴史をさらに掘り下げます。どうぞお楽しみに。

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