はじめに
コンビニの社会インフラ化、身近な暮らしの拠点へ
さらに、コンビニでは生活上のサービスの取扱いが増えています。公共料金や税金の支払い、住民票発行など行政関連サービスの代行、銀行ATMサービス、宅配便やクリーニングの受け取りや預かり、無料Wi-Fiサービスなどにも対応しています。もはや、コンビニは消費者にとって暮らしの拠点の1つとなりつつあります。
特に高齢単身者にとって、身近に暮らしの拠点があることは、とても安心できるのではないでしょうか。また、コミュニケーションの場としての価値もあるでしょう。さらに最近では、コンビニは社会インフラとしての価値も高まっているようです。
セブン&アイ・ホールディングスの「CSRレポート2017」を見ると、「高齢化、人口減少時代の社会インフラの提供」を重点課題の1つにあがっています。今、人口減少によって生活拠点の空洞化が進んでおり、2030年には徒歩圏内に生鮮食品店がない高齢単身世帯数が現在の約2倍になるそうです。そこで同社では、先ほどの買い物支援や食事宅配サービスなどに加えて、自治体との連携協定を進めているようです。
例えば、店舗の中や宅配サービスで訪問した際に高齢者の異変などを察知した場合は自治体と連携して対応すること、また、近年、日本では深刻な災害が起きていますが、災害時の迅速な物資支援、帰宅困難者への水道水やトイレ、周辺情報の支援などの協定が進められています。なお、同業他社でも同様の取組みが見られています。
人口構造やニーズ変化を脅威ではなく機会に
ここまで、コンビニのサービス面の強化に注目してきましたが、モノでも付加価値を高める取組みが見られます。小分けの食品や惣菜はさらに充実していますし、生鮮食品の取扱いも増えています。プライベートブランド商品の種類も増え、淹れたてコーヒーも人気です。
また、正月にはお節料理が注文でき、節分には恵方巻きが売られ、春には苺のスイーツが売られます。コンビニで、もはや旬さえも楽しむことができます。高齢単身者だけでなく、主婦や家族世帯にとっても魅力が増しています。これら全ての取組みが、伸び続ける売上高の背景にあるのでしょう。
少子高齢化による人口減少が脅威となる業界は少なくありません。一方で、人口構造や世帯構造の変化、消費者ニーズの変化は事業成長の機会にも成り得ます。変化をどう捉えるかが事業成功の鍵となるのではないでしょうか。
※1久我尚子「増え行く単身世帯と消費市場への影響(1)・(2)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/5/9、8/21)
※2久我尚子「ひとり暮らしの若者の家電事情」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/4/16)
※3ローソンの提供するネットスーパー「ローソンフレッシュ」ホームページより