はじめに

JR新橋駅の汐留改札から、歩いて10秒ほど。駅地下の商業施設・ウィング新橋の真正面に、大きなデジタルサイネージが現れました。裏手に回ってみると、超狭小のワイシャツ販売店が営業していました。

9月25日にオープンしたこの店舗は、シャツ専門店チェーン「BRICK HOUSE(ブリックハウス)」など展開する東京シャツの新業態、「TOKYO SHIRTS ウィング新橋店」。業界初となる売り場面積5坪の狭小店舗です。

この新店舗の特徴は、その狭さだけではありません。小売業界では初めてNFC(近距離通信規格)タグを採用し、店で気になった商品をその場で買わず、自宅でゆっくり品定めすることが可能になっているのです。

なぜ、一風変わった新店舗を開業することができたのでしょうか。東京シャツの戦略をひも解いてみます。


ビジネスマンの緊急事態に対応

この新店舗で取り扱っているのは、50種類・約1000点のシャツと約500点のネクタイ。シャツはすべてメンズで、コットン100%の形態安定シャツを中心とした商品展開になっています。

購入したシャツは、フラットパックという東京シャツとしては初導入の包装で手渡されます。通常だと8点の包材を使っているところ、この包装では包材を襟カバーだけに削減。袋に入れると、通常時の半分程度の厚みに圧縮できるというものです。


A4サイズで圧縮でき、ブリーフケースにも簡単に入るサイズに

圧縮したパックはA4サイズで、そのままブリーフケースに入れることが可能。急な出張の際にも使い勝手が良いような配慮が施されています。圧縮袋は再利用可能で、環境にも購入者の財布にも優しい設計になっています。

年商の2割がNFC経由との想定

しかし、新店舗の最大の特徴は、何といっても冒頭でも触れたNFCタグを採用し、商品情報を自宅などに持ち帰ることができる点です。iPhone XSなどの対応機種であれば、商品に貼られたタグにそのままかざせばOK。非対応機種でもアプリをダウンロードするか、QRコードを読み込めば、最大7点までスマートフォンに商品を表示できます。


商品情報は最大7点まで表示可能

気になった商品を選び終わると、店舗スタッフからお気に入りカードを受け取ります。そこに記載されているQRコードを店舗外で読み込むと、店舗で選んだ商品が再表示されます。スマホ上で商品をクリックすれば公式通販サイトに飛ぶので、後はサイズを選択し、カートに入れるだけです。

まさに、店舗の狭さを逆手にとった販売戦略。顧客層は30~40代のビジネスマンを想定しています。既存店舗での顧客の年齢層が上がってきたため、顧客の幅を広げたい狙いがあるといいます。

年商目標は6,000万円。東京シャツでは、このうちの2割がNFCタグを使ったEC(ネット通販)経由になると想定しています。「コットン100%の形態安定シャツを前面に押し出し、本格的なSPA(製造小売業)として顧客満足度を高めていきたい」と、同社の鈴木弘之社長は意気込みます。

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