はじめに

個人投資家のメリットとデメリットは?

最後に、今回の売買単位の統一は個人投資家にとってどのようなメリットとデメリットがあるのか見てみましょう。実際に数人の個人投資家にも意見を聞いてみました。

まずは、これまでにも述べてきた通り、最低購入金額が下がることと、銘柄間の横比較が容易になることはメリットと言えるでしょう。また、最低購入金額で株式を購入した個人投資家にも株主優待を出している企業の株式は優待利回りが上がるというメリットもあります。

また、NISA(少額投資非課税制度)が個人投資家の間でもかなり浸透してきましたが、最低購入金額が下がることで、NISAでの買い付けにおいて投資信託だけでなく、個別株にも対象が広がる可能性があります。

NISAの年間累積購入代金(非課税投資枠)が120万円の為、最低購入金額が何十万円もすると、枠のほとんどを1銘柄が占めることになり、かなりの銘柄リスクをとることになってしまいます。場合によってはそもそも最低購入金額が120万円を超えてしまっているケースもあったため、どうしてもNISAというと投資信託が投資対象に選ばれる傾向にありました。

投資戦略的な観点から言えば、売買単位が統一され、1,000株から100株になったような銘柄であれば、既に保有している銘柄の株価が下がったところで小ロットで買いまして買付単価を下げていくような投資行動もとりやすくなるでしょう。

ここまで見るとメリットしかないように思われますが、デメリットも考えられます。実際に個人投資家から聞かれた意見を紹介しましょう。

一般的に、投資歴の浅い個人投資家は短期取引をしがちと言われています。売買がしやすくなり、新たに投資を始める人も増え、投資戦略の幅も広がる。その結果、個人投資家の売買回数が増え、長期投資をする投資家の比率が下がる可能性があると言います。

また、投資に不慣れだと、投資している銘柄の株価が下落すると、最低購入金額が下がることで買い増し(ナンピン)を積極的にしてしまったり、一方で、大きな損失が出てしまえば塩漬けにしてしまったりと、投資資金が有効活用できずに機会損失を発生させてしまうこともあるかもしれません。

売買単位の統一によって、新たに株式投資の世界に足を踏み入れる人が増えることは喜ばしいことです。ですが、株式投資の基礎をしっかりと学んでから投資を始めることの重要性を改めて認識してもらえればと思います。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)

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