はじめに

生活費と区別できない経費について

家賃のほかにも、携帯電話、電気、水道、ガスを事業に使用している場合もあるでしょう。この場合は、それぞれの料金をどの程度事業に使用しているのか、ご自身で判断して経費にしていただくことができます。

そうは言っても、自宅兼事務所の場合で、水道代やガス代はほとんど生活費かと思いますので、経費にするのは難しいでしょう。一方、自宅で料理教室などをしている場合は、水道代やガス代の一部も経費にすることができます。

自動車をプライベート、事業で共用することもあるでしょう。この場合は、使用日数や走行距離などで事業に使用する割合を決定するのが良いでしょう。もちろん、ガソリン代や車検代、駐車場代も事業使用割合で按分して経費にすることができます。

出張に行かれる際には、ご家族が同行することもあるかもしれません。この場合、ご家族の旅費はもちろん経費にはなりません。出張先で1日は仕事、1日は観光するのであれば、やはり事業割合に応じてご自身の旅費の50%を経費にすることができます。

社員旅行なら一般的に福利厚生費として経費にすることもできますが、個人事業主の場合は注意が必要です。家族従業員しかいない場合、社員旅行は家族旅行と同じですので、福利厚生費として経費にすることはできないからです。

経費になる支出、経費にならない支出

所得税や住民税の支払い、仕事中に交通違反をした場合の反則金支払いなどは経費にはなりません。税金や反則金を支払ったことで税金が安くなるのでは、税金や反則金の意味がなくなってしまうからです。

税金の中でも事業に使用するものにかかる固定資産税、自動車税は事業使用割合に応じて経費にすることができます。事業をしていることでかかる「事業税」も、経費にすることができます。借入金の元本部分は、借りたお金を返しているだけですので、経費にはなりません。経費になるのは利息部分だけです。生命保険料などの支払いについても、個人の場合は「保険料控除」という項目で税額計算の際に調整されますので、基本的には事業用の経費にはなりません。

これまで見てきたように、たとえ領収書があっても、生活費、個人的な支出、家族従業員しかいない場合の福利厚生費などは経費にはなりません。一方で、取引先に対する慶弔関係の支払いなどは、領収書がなくても経費にすることができます。証拠となる招待状などに、包んだ金額をメモしておくと良いでしょう。

今回ご説明した中で、経費にしていなかった支出はありますでしょうか。生活費と切り分けられないものでも、事業に使用しているものがありましたら、ぜひ事業使用割合で按分して経費にしてもらえればと思います。

間違って経費にならないものを経費にしていると、いざ税務調査が行われた際に、多額の税金を納める結果になるかもしれません。正しい知識を身につけて、損することのないように確定申告をしましょう。

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