はじめに

2016年11月23日(水)、渋谷・セルリアンタワー東急ホテルにて開催されたイベント「お金のEXPO 2016」。「貯蓄から投資へ」と題した本イベントは、ゲストスピーカーによる講演を始め、業界を代表する金融機関の専門家によるセミナーなどが行われ、お金について網羅的に学べる場となりました。

当日開催されたセミナーの中から本記事では、SMBC日興証券株式会社 投資情報部 部長の香川伸一氏が語った今後の相場と今狙うべき最適な投資対象についてご紹介します。


トランプ新政権は市場にどんな影響をもたらす?

**香川氏:**お金に働いてもらうという観点からお話をさせていただければと思います。

アメリカ大統領選の結果を受け、トランプ政権の樹立が決まりました。世界中がリスクにさらされるという話がありましたが、マーケットについていえば大きなマイナスはなかったと言えます。

影響があったのは東京証券取引所くらいで、株価が1,000円下落、円相場が急激に円高になりました。ニューヨークの市場はむしろ19,000ドルの大台に乗っています。今後も上昇が期待できるマーケットと言えるのではないでしょうか。

今回のアメリカ大統領選は、バドワイザーを好んで飲むブルーカラーとスターバックスでコーヒーを飲むホワイトカラーの戦いだったと言えるわけですが、拮抗していたとはいえ中間層が勝利をおさめたことで、アメリカの国民は「強いアメリカ」の復活を望んでいることがわかりました。

さて、過去20年間をさかのぼってみますと、新しい大統領が就任した年は80%の割合で株価が上がるというデータがあります。ということは、来年1年間は株価上昇が期待できるわけです。

ここでトランプ政権が行うであろう政策を考えてみましょう。

1. 国防の強化

これが「強いアメリカ」の復活につながります。

2. 財政政策

10年間で1兆ドルにも及ぶ金額をつぎこみ、道路や橋、学校などを建て替える事業を行うそうです。日本では先日、福岡の道路が陥没する事故がありましたが、アメリカの道路も老朽化が進んでいます。

3. 金融規制の緩和

証券を扱う仕事をしている人間として、一番注目しているのがこの部分です。

トランプ氏はオバマ政権下で実施されてきた「ドッド=フランク法」の撤廃を公約しています。リーマン・ショック後の経済危機から脱却するため、金融機関が大規模な投資をできないようにしたのがこの法律でした。

この規制が緩和されるということは、世界の金融が大きく変化するということです。リスクから逃げ惑うリスクオフの時代は終わり、積極的にリスクをとって大きなリターンを得るリスクオンの時代へと変わっていきます。本格的にマーケットが回復していくはずです。

日本経済の変遷と現状

ここで日本市場の変遷を少し振り返ってみましょう。

バブル経済時の日経平均株価は35,015円ととてつもない金額を記録しています。株式益利回り、つまり企業に投資をした場合、どれくらいの率で利益を上げてくれるのか示した数値を見てみると、100万円の投資で9,800円の利益、配当金は3,800円という数値が出ています。10年間の固定資産運用によるリターンが5.74%の時代です。多くの人が株を買い漁った結果、バブル経済は崩壊しました。

さて、それでは現在の状況を見てみましょう。

いま日本市場はほぼゼロ金利で動いています。マイナスに転ぶこともあるので、資産運用のために国債を買ってもむしろお金を払えと言われてしまう時代なのです。

ということは低利回りのものにはなかなか投資ができません。一方、株式益利回りを見てみると、100万円の投資で62,500円の利益、配当金は18,400円という数値です。もちろん変動するリスクはあるものの、より圧倒的なリターンが得られます。

つまり、預金や国債といったリスクの少ない運用方法はむしろマイナスで、積極的にリスクをとらない限りリターンを得られないリスクオンの時代になっているのです。

さらに日本のマーケット状況について確認しておきます。

安倍政権が進めてきた「アベノミクス」政策によって、株価と為替の水準は圧倒的に好転しました。株価は17,000円、為替は111円です。アベノミクスは市場にかなり大きなインパクトを与えたと言っていいでしょう。また、民主党政権時代に悪化した雇用環境についても、好転してきました。

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