はじめに

今後の日本経済はどうなる? 抱えている課題は?

とはいえ、日本が抱える問題はまだ山積みです。最大の問題は人口が減少していること。つまり、今後税収は減っていくわけです。でも高齢化にともなって社会保障費はかさむ。そこで行われたのが消費税率の引き上げです。1%と消費税率を上げると2兆円の税収増加が見込めます。

さらに税収を増やす方法は消費を増やすこと。消費は少しずつ増えていますから、アベノミクスは概ね成功したと言ってもいいでしょう。

さて、安定的に伸びていた株価や為替相場が昨年から少し落ち込み始めました。

その理由は世界の情勢が大きく変わったからです。欧州危機やイギリスのEU離脱という不安定な状況のなかで、安全な通過である円が買われて円高が進みました。年初に1ドル120円だった為替相場は一時99円まで上がったのです。日本経済は輸出産業に頼っている部分が大きいですから、円高は大きな打撃です。企業の業績が落ち込んだことで株価が下がりました。

それ以降、現在まで日本の株価は低迷したまま上がることがありません。しかし、世界のマーケットを見てみると一時期にリスクオフの状況を脱して立て直しができているところが多いのです。では、なぜ日本だけが今も株価の低迷にあえいでいるのでしょうか。

それは、東京証券取引市場の6〜7割の取引は外国人投資家が行っているからです。

リスクのある資産は有無を言わさず売ります。外国人投資家が売り越すと株価が下がります。つまり、日本の投資家がリスクをとって取引をすれば株価は下がりにくくなるわけです。

他にもまだ日本経済が抱える問題はあります。

最終消費支出と雇用者報酬のグラフを見てみましょう。 この2つの指数は相関の比例関係にあります。最終消費支出がガクッと下がったのは消費税率引き上げの直後。そのあとは、雇用者報酬が上がっても消費が増えない構図になってしまっています。

(SMBC日興証券セミナー資料より抜粋)

それでもさらに消費の拡大をするならやはり賃金を上げなければなりません。連動性の高い数値を上げればいいので、物価を上げるということにつながります。いま日本銀行が取り組んでいるのは、2%のインフレを目指す施策。これが達成されると、賃金は4%アップするそうです。

私も先日家のテレビを新調しましたが、買い替え需要が高まっているいま経済を押し上げることが大切でしょう。マイナス金利政策や公共事業への投資などあしもとの経済の停滞を押し流すような政策も始まっています。

もうひとつ注目すべきが日米の金利の差。単純なことですが、お金は金利の低い方から高い方へと流れるものです。いま日本の金利はほぼゼロなので、アメリカの金利政策に注目しておけばいいでしょう。昨年の夏、リスクオフで起こった急激な円高は落ち着いてきて、徐々に円安に戻ってきています。そんな中で、来月アメリカの金利が上がる施策が打たれる予定なので、日本企業の収益にはメリットが大きいはずです。

株式投資の前に知っておきたいこと

ここで株価が割高なのか割安なのかを判断できる基準を教えます。たとえば、1年間で100円の利益がでるという株を、人は100円で買います。でもその利益が2年続くと言われれば200円、3年と言われれば300円と増えていくわけです。いまはそれがだいたい15倍くらい。12倍から20倍くらいの間が普通なのでそこまで割高というわけではありません。

(SMBC日興証券セミナー資料より抜粋)

ではどういう銘柄の株を買えばいいかというと、自己資本利益率が高い企業のものです。先ほど、日本経済の発展のためには消費を増やす必要があるという話をしましたが、そのためには国内の市場だけにとどまっていても限界があります。どんどん海外の企業とタッグを組んでやっていく必要があるのですが、企業の自己資本利益率を見てみると、先進国の中でも日本はダントツのビリ。しかもそれがずっと続いています。

これは簡単に言うと、日本の企業は資本金のムダ遣いが多いということです。このような状況ではとても外国企業の参入は望めません。自己資本利益率を上げていくためには役員報酬を下げたり、株式の持ち合いをやめたり、といった取り組みが必要です。

政府が、自己資本利益率が上がると株価が上がるような仕組みを施策として取り入れたので、徐々に自己資本利益率は上がっていくことが予想されます。ちなみに現在の自己資本利益率の平均が8%から10%に上がるだけで株価が倍になるのです。

また、非製造業の効率の悪さも日本経済の欠点です。これまで設備投資を避けてきたこともあり、抜本的な変革がまだ進んでいません。企業の生産性を日米で比べると、ほぼすべての分野で日本が下回っています。

たとえば、ショッピングセンターの行列が解消されるだけでも利益はかなり上がります。そのために導入すべきなのがセルフレジです。現時点で、TSUTAYAやGU、マクドナルドなどで導入されていますが、事実、店員の数が少なくても効率的に売上が増えていきます。またセルフレジが増えれば半導体の需要も高まります。折しも、IoTやビッグデータ、自動運転自動車、VRなど、この他にも半導体需要が高まっており、半導体は足下でもどんどん輸出され、日本経済の発展につながるでしょう。

12月はNISAの〆切の月なのですが、この時期ギリギリに投資する人が多いです。上位銘柄は、三井物産、トヨタ、キヤノンやメガバンクなど向こう10年潰れることはないだろう企業のものです。多くの人が購入すればそれだけ株価が上がりますから、その前にタイミングをみて買っておくといいのではないでしょうか。

皆さんには今後、積極的にリスクオンの投資に挑戦してほしいと思います。

この記事の感想を教えてください。