はじめに

たとえば、○○市に2万円寄付をする→もともと自分が納めなければならなかった税金が1万8,000円少なくなる→寄付先から肉や魚、米や酒、果物などの返戻品がもらえる。上手に寄付すれば自分の持ち出しは2,000円だけ。

ふるさと納税を簡単に言うとこうなります。ここ数年、使いやすくお得度がアップしたため、ふるさと納税をする人が急増しています。

一方、この制度を推し進めていた総務省が、返戻品競争の過熱ぶりに待ったをかけ、返戻品を寄付金額の3割以下にするよう要請したり、見直しをしていない自治体名を公表したり……と改正の動きも出ています。あらためて今回は話題の「ふるさと納税」の基本的な仕組みとやり方、注意点などを取り上げましょう。


ふるさと納税の仕組み

給与や、自営業などの一定以上の所得がある場合は、所得税と住民税がかかります。所得税は国に、住民税は、本来は自分の住んでいる都道府県や市町村に納付します。

ふるさと納税は自治体を自分で選んで納税できる制度です。ただし、納税したい自治体へ「寄付」する形で行います。

たとえば、平成30年に自分で選んだ自治体に2万円を寄付したとします。すると自分の住んでいる自治体に支払う翌年の住民税は1万8,000円少なくなるのです。最低2,000円は自己負担します。

この負担額が2,000円で済むようにするには、寄付金額に限度額があります。それは納めるべき住民税のざっくり2割程度と考えていいでしょう。もちろん寄付ですからこの限度額を超えてもいいのですが、超える部分は自己負担の純粋な寄付になります。

なぜ限度額があるのでしょう。

それは、それぞれの自治体は、住民へのさまざまな行政サービスを行うための資金源を住民税でまかなっているからです。行政サービスとは、日常生活に欠かすことのできない、道路や橋、公園の設備から、教育、福祉、消防・救急、防災、ごみ処理などです。

無制限に住民が好きな自治体に納税できることとなってしまっては、寄付者が多い自治体の財源が確保できません。現に、東京23区や川崎市は多額の住民税が他の自治体に流出してしまい、この点でも問題視されています。

ふるさと納税をした場合の所得税は?

では、具体的な税金の仕組みはどうなっているのでしょう。

もともと、国へ治める所得税と自治体に納める住民税において、寄付金控除という制度があり、寄付した人の税金負担が少なくなるような制度があります。

税金は1年間の収入金額からその収入を得るためにかかった必要経費を差し引いて、「所得」を計算し、さらにそこから、生活の事情を考慮したさまざまな控除(所得控除といいます)を差し引きます。おなじみの所得控除には、医療費控除や扶養控除、配偶者控除などがあります。所得税では寄付金控除もこの所得控除です。所得税では、寄付金から2,000円を差し引いた金額を「寄付金控除」として所得から差し引きます。差し引いた後の金額に税率をかけて所得税額を計算します。

(収入-必要経費-所得控除(寄付金控除))×税率=所得税

税率をかける金額の大きさに応じて5%~45%まで税率が分かれています。ですから寄付=ふるさと納税をした場合、所得税では(寄付金-2千円)×税率の額が節税できたことになります。たとえば、2万円を寄付した人の税率が20%であれば、(2万円-2,000円)×20%=3,600円の節税です。

所得税の寄付金控除は、寄付をした翌年に確定申告をすれば適用を受けられます。

住民税の寄付金控除は?

確定申告の情報は自動的に市町村に送られることとなっています。そして、市町村が住民税の額を計算します。納税方法は、会社が給与天引して、会社が代わりに市町村へ支払います。自営業などの場合は市町村から送られた納付書で納税します。

住民税の寄付金控除は計算した住民税額から差し引きます。

(収入-必要経費-所得控除)×税率10%=住民税
住民税-税額控除(寄付金控除)=住民税の納税額

住民税においては自治体等への寄付金について、もともと寄付金額から2千円を差し引いた金額の10%は税額から差し引くことができます(基本部分の寄付金控除)。

(2万円-2,000円)×10%=1,800円(住民税の基本部分の寄付金控除額)

ふるさと納税については、さらに寄付金控除の上乗せがあります。
ただし、所得税の確定申告をした場合は、すでに所得税の方で寄付金控除というメリットを受けています(上記の例でいえば3,600円)ので、住民税についてはそれ以外の部分について、本来おさめるべき住民税の2割を上限として寄付金控除額が計算されます。

先ほどの2万円を寄付した人の事例で言いますと、ふるさと納税は次の算式で求めた金額(1万2,600円)が、その人の納めるべき税金の20%以内であれば、住民税から減額されるのです。

この結果、3,600円+1,800円+1万2,600円=1万8,000円が所得税と住民税で節税できます。 

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