はじめに
米国では、4年に1回、大統領選挙が行われます。2年後の“中間の年”に、日本で言う国会議員に当たる連邦議員の選挙が行われます。これが中間選挙です。
今年はこの“中間の年”にあたり、11月6日に中間選挙が行われます。米国の選挙制度は複雑で、一般の人に分かりにくいところがあります。もちろん興味があれば正確に知っておく方が良いですが、米国は日本とも関係が深いとはいえ、さすがに他国のことです。
一般の読者の皆さんは、過去の選挙後に株価がどう動いてきたかなど、日本株への影響を考えたり、知ったりすることの方が有益かもしれません。実はこの中間選挙、古くから日本の株価と強い関係があるので運用のプロも注目しているのです。
中間選挙の年は株高になりにくい
まず、日本株への影響でよく言われる話として、「中間選挙の年は日米共に株高になりにくい」というものがあります。実際に、4年に1回の大統領選の年の株価を平均すると、日米共に他の3年間と比べ、騰落率が最も低いものになっています(下表)。
これには、次のような理由が言われています。ドナルド・トランプ氏が米大統領になったのは、2年前の2016年です。大統領の任期は次の大統領選までの4年間です。ここで、これまでの大統領は次のように考える傾向が多いようです。
まずは、任期後の次の大統領選で再選を勝ち取るなど、自身の所属する党に有利にするため、国民にとっては厳しいものですが、国家を良くするためにやらなければならないような、痛みを伴う政策は、なるべく早い段階で行います。
そして、任期の後半には、多くの国民が喜ぶ景気刺激策を打ち出して、大統領選の辺りで景気を好調になるようにもっていきがちなのです。このため、任期前半の中間選挙に向けて、景気や株価は厳しい傾向になりやすいといわれます。
期間の区切りを変えると見え方は一変
当然ですが、米国株があまり良くなければ、日本株も影響を受けてしまいます。実際に、これまでの相場を振り返りましょう。10月31日現在でNYダウは2万5,115ドルとなり、昨年末比でほぼ横ばいです。日経平均株価は844円下がっています。
こんなお話をすると、年末に向けて株価は厳しいのかな?と思われる読者の方も多いでしょう。ただ、ちょっと待ってください。実は、もう少し分析を深めると、別の結果が見えてきます。
中間選挙は、11月の初頭となる第1火曜日に行われるのが基本です。そこで、11月から年末と、さらに翌年の3月までについて、中間選挙の年と他の年を比較して株価の騰落率を平均してみました。
すると、先ほどとは異なる傾向です。他の3年と比べて、中間選挙の年は日米共に11月から翌年の3月までの相場が最も平均騰落率が高くなっています。今年でいえば、来年の3月までの相場が好調ということです。
つまり、中間選挙までは、選挙結果の行方を見極めたいという動きや、政治の先行きに不透明感が広がるため、経済や相場の重荷になりやすい状況となります。しかし、選挙後はこうした懸念は一段落することで、相場は堅調に推移するようです。
また、2年後の大統領選挙に向けて現政権が経済を良くする政策を、さらに本格化していくだろうとの投資家からの期待からも、株価が上昇すると考えられるのです。
(写真:ロイター/アフロ)