はじめに

日本で新興国投資がブームになったのは、もう5年以上も前の話になります。ゴールドマンサックス証券に所属するアナリストが2003年10月に書いた「Dreaming with BRICs: The Path to 2050」(BRICsとともに見る夢:2050年への道)というレポートがきっかけで、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)への投資が日本でも流行りました。

そして、投資家はフロンティア地域への投資ということで、更なる発展途上の国への投資機会を求めました。なかでも、ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」とも呼ばれましたが、気づけば日本国内での新興国への投資熱は下がっていきました。今回は、ミャンマーの現状を見ていきます。


ミャンマー経済の基礎的情報

ミャンマーがどこにあるかご存知でしょうか?インド、バングラデシュ、中国、ラオス、タイと国境を接していますが、一番イメージしやすいのは日本から見るとタイの左側にある国というと一番場所がイメージしやすいかと思います。

最近のニュースではロヒンギャ問題で同国の名前を聞くことがあると思いますが、それ以外ではあまり同国の名前を耳にすることはないかもしれません。アジア圏を見渡すと、韓国や台湾は日本からも近く料理も美味しいですし、インドネシアにはバリ、タイにはプーケットなどのリゾート地があるため、投資だけではなく旅行や観光という観点でも同国への印象はないかもしれません。

しかし、ミャンマー中央統計局の『Monthly Economic Indicators』によれば、ヤンゴン、マンダレー、ネピドー国際空港への観光ビザベースでの入国者数は、2016年度は日本から43,106人が同国へ訪れており、同国から見ると日本は3番目に観光客として訪れる人が多い国なのです。

IMFの『World Economic Outlook Database, April 2018』によれば、同国の人口は5,225万人とASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10か国の中で5番目に人口の多い国になります。しかし、一方で1人あたりGDPを見てみると1,340ドルと加盟10か国の中で最下位となっています。同国の平均年齢は29歳と非常に若い国です。

人口が多く、平均年齢が若い。そして、依然として1人あたりのGDPは低い。一方でIMFの予測によれば2018年のGDP成長率の予測値は6.4%と高成長を期待されています。この情報だけ見れば、依然として投資の魅力はあるように思えます。

証券取引所ができて2年半

さて、投資の魅力があるとなると、株式投資をしたいと思うかもしれませんが、そもそも同国に証券取引所はあるのでしょうか。ミャンマーの首都はネピドーですが、証券取引所はヤンゴンにあります。ヤンゴン証券取引所は2016年3月に株式取引が開始されました。日本とも縁が深く、金融庁、日本取引所グループ、大和証券グループなども同取引所を支援しています。

日本株や米国株への投資しかしたことがない個人投資家には意外に思われるかもしれませんが、新興国で証券取引所が出来ると最初の頃は非常に不便なことが多く、徐々に改善されていく傾向にあります。

同取引所も2017年12月にオンライン取引が開始されました。また、取引もリアルタイム取引ではなく、当初は午前11時と午後1時の1日2回だけ売買注文のマッチングをしていました。現在は午前10時と正午にも取引するようになり、1日の内に計4回取引のタイミングがあります。

証券取引所ができてから2年半が経ちましたが、現在はまだ5銘柄しか上場企業がなく、当初は順調な滑り出しだったものの、現在は時価総額、売買代金、株価指数などいずれも低調になっています。そもそも、まだ日本人投資家が投資できる状況ではありませんが、いずれは先行するアジア新興国の株式市場の様な展開になると考えられるため、今の時点から注目しておいてもよいでしょう。

これから期待されること

筆者は過去にアジア圏のストラテジスト業務や、ASEAN株式をメインとした外国株式事業の立ち上げも経験しており、アジア各国の株式市場の歴史についてはそれなりに理解があると自認していますが、その他の先行しているアジア各国の株式市場の歴史を振り返ると、今後同国の証券市場で起こっていくイベントも想像はつきます。

現在はまだ5銘柄だけしか上場していませんが、今後は政府主導で国営企業が公営化・民営化されて株式市場に上場し、それと合わせて外国人投資家への規制も緩和されていくでしょう。先進国の株式しか投資したことない個人投資家の方は馴染みがないかもしれませんが、新興国市場では外国人に対する投資制限は非常に多いのです。

同国は前述の様に成長するには十分な条件がそろっているため、どこかのタイミングで改めてミャンマー株式への投資ブームが来るでしょう。そして、時期を同じくして国内機関投資家による取引も活性化していくでしょう。

個人投資家のスタンスは?

これまでミャンマーについて、投資という観点から大まかに書いてきましたが、今から投資したいという場合はどうすればよいのでしょうか。現時点では直接ミャンマーの株式を購入できないため、手段は2つかと思います。

1つ目はミャンマー関連株式と呼んでも問題ない企業の銘柄を買うことです。例えば、シンガポール証券取引所に上場しているヨマ・ストラテジック・ホールディングスや、インタレ・リソーシズなど、ミャンマーにおける売上高比率の高い企業に投資するのは事実上、ミャンマーへ投資するのに等しい投資行動になるといえるでしょう。

2つ目はアジア圏のフロンティア地域にも投資資金の一部を振り分けることを明示している投資信託を購入することです。数は少ないですが、日本国内にもそのような投資信託はあります。

資産運用として投資を考えた時、中長期の視点を持ちながら、単一市場だけでなくグローバルに分散することが基本となりますが、投資資産の一部をフロンティア市場に割り振るのは良い考えだと思っています。集中投資の対象とするには不安が多い市場かもしれませんが、将来性を考えればポートフォリオの一部がミャンマー市場への投資に振り分けられているのもよいでしょう。

しかし、当然ながらフロンティア市場は先進国だけでなく、新興国と比べても更にリスクが高いということは十分に認識しておく必要があります。例えば、世界的なネガティブイベントが起きた場合、最初に資金が逃げていく市場である為、短期間のうちに大きく下落することはしばしば起こります。

あくまで、ポートフォリオの一部の投資先として検討してみるというスタンスが望ましいでしょう。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平 写真:代表撮影/ロイター/アフロ)