はじめに

あなたにとって、「ふるさと」とはどこですか? そこは、必ずしも生まれ育った土地ではないかもしれません。ふるさと納税の“ふるさと”も、それと同じように、必ずしも生まれ育った土地ではない場所を包含する概念になっています。

今年、ふるさと納税の制度は、スタートしてからちょうど10年という節目を迎えました。制度を利用しているかどうかはさておくとしても、ふるさと納税という言葉を聞いたことがないという人はいないくらい、ふるさと納税は全国的に浸透しています。

ふるさと納税シリーズ第一弾は、ふるさと納税の制度趣旨と概要、見直しの動向についてお伝えいたします。(※なお、本シリーズでは特に断りのない限り、個人のふるさと納税を前提としています)


ふるさと納税はなぜできたのか?

ふるさと納税を管轄する省庁は、地方行政を担っている総務省です。ふるさと納税の制度の趣旨は、総務省のホームページに次のとおり記載があります。少し長いですが趣旨は大事なので引用します。

多くの人が地方のふるさとで生まれ、その自治体から医療や教育等様々な住民サービスを受けて育ち、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税を行っています。その結果、都会の自治体は税収を得ますが、自分が生まれ育った故郷の自治体には税収が入りません。そこで、「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっ ても良いのではないか」そんな問題提起から始まり、数多くの議論や検討を経て生まれたのがふるさと納税制度です。
(出典:総務書「ふるさと納税研究会報告書」)

制度がスタートするきっかけとなったのは、やはり自分の生まれ故郷である自治体に「恩返し=納税」をしたいという希望にこたえるということでした。

しかし、総務省は「ふるさと納税で日本を元気に!」というスローガンを掲げ、冒頭で述べたとおり、生まれ故郷だけでなく、応援したい自治体をどこでも選択できるように設計しました。ふるさとを自分で選んで納税できるという制度設計が、ふるさと納税の大きな魅力となっています。

ふるさと納税とはどんな制度?

ふるさと納税はその名のとおり、納税の制度です。しかし、ふるさと納税の取引形態としては、納税者から各自治体に対する「寄附」という行為であり、税法上も寄附として取り扱われます。納税であり、寄附でもあるというのは、少し不思議に思われる方もいるかもしれません。

ふるさと納税ではない通常の寄附として自治体に寄附金を支払った場合には、寄附金控除という制度が用意されており、基本的には確定申告等を行うことで、寄附金の一部 が所得や税額から控除されるようになっています。

一方、ふるさと納税をした場合には、基本的に2千円の自己負担額を除いた金額の全額 が控除の対象となります。加えて、返礼品を用意している自治体については、寄附者のもとに地元の特産物などが送られてきます。

つまり、ふるさと納税は、寄附としての支払額は実質的に所得税や住民税の前払い(納税)と同じと捉え、所得税や住民税に元からあった寄附金控除の仕組みを使って、その支払額を所得金額や税額から減額するという制度であることから、ふるさと“納税”という名称になっています。「寄附」であり、前払いという意味で「納税」にもなっている、それがふるさと納税です。

ただし、ふるさと納税をすればするほど、いくらでも控除してもらえるのかというと、そういうわけではありません。次回以降の記事で解説しますが、収入金額や家族構成等により、限度額が定められています。

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