はじめに

冬のインターンの時期を迎え、にわかに活気づいてきた2020年卒の新卒採用市場。この後には3月の広報解禁、6月の面接解禁が控えており、採用の動きが一気に本格化していくことになります。

こうした中、リクルートワークス研究所が、毎年恒例となっている「採用見通し調査」の結果を発表しました。全国の従業員5人以上の民間企業7,179社(回収率65.3%)を対象にしたアンケートからは、前年に続いて企業側の旺盛な採用意欲が浮かび上がりました。

しかし、時系列でデータを分析すると、新卒採用市場の潮目が変わりかねない予兆も垣間見えます。売り手優位の市場で、どんな変化が起きているのか。最新データをひも解いてみます。


大卒採用難で高卒にも対象拡大

12月19日に公表された「ワークス採用見通し調査(新卒:2020年卒)」。大卒・院卒の採用見通しでは、「増える」と回答した企業は全体の13.8%、「減る」と回答した企業は5.9%となり、「増える」が7.9ポイント上回る結果となりました。

特に採用意欲が旺盛なのが、従業員規模が5,000人の大企業です。「増える」が19.6%に対し、「減る」は5.4%で、その差は14.2ポイント。「大企業のほうが景況感は良いので、その結果を反映した形です」(リクルートワークス研究所の茂木洋之アナリスト)。

業種別では、金融・保険で「増える-減る」が+1.4ポイントとなった反面、小売り(+13.7ポイント)、飲食・宿泊(+12.0ポイント)、情報通信(+10.0ポイント)など、人手不足が叫ばれている業種で「増える」が大きく上回る状況が続いています。

一方、高卒の採用見通しでは、「増える」が10.7%、「減る」が2.9%で、「増える-減る」は+7.8ポイントとなりました。7.8ポイントのプラスは2006年の調査開始以来、過去最高。「今後も採用しない」が32.3%と、前年より2.6ポイント低下するなど、高卒採用を拡大する方向にシフトしている企業が多いことが読み解けます。

業種別では、飲食・宿泊が+16.6ポイント、小売りが+12.5ポイント、製造業(機械以外)が10.5ポイントと、特に労働集約的な業種で採用意欲が旺盛。情報通信(+0.6ポイント)など専門知識が必要な業種では、それほど需要が高まっていない状況ですが、全体としては大卒人材の採用が難しくなる中、「採用の対象を広げる選択肢の1つとして、高卒を考える傾向がある」(古屋星斗研究員)ようです。

“高止まり”か、“ピークアウト”か

大卒人材の供給が45万人前後と横ばいで推移する一方、求人総数は2019年卒で約81万人(リクルートワークス研究所しらべ)、2020年卒はさらに求人数が増えると見られる中、売り手市場の色彩が一段と濃くなりそうです。

こうした状況はいつまで続くのでしょうか。企業の採用意欲の高まりを示す「増える-減る」のポイントは、大卒・院卒では2012年卒以降、9年連続でプラスを維持しています。高卒も2015年卒以来、6年連続のプラスとなっています(下図)。

ただし、大卒・院卒は2019年卒の+10.7ポイントから、2020年卒は+7.9ポイントとピークアウトしています。この点について、古屋研究員は「『増える』『減る』は前年の水準との比較であり、前年の高い水準からさらに採用を増やす企業が増えているので、“高止まり”と解釈しています」と説明します。

その一方で、日本銀行が12月14日に公表した日銀短観では、製造業・大企業の業況判断が足元の+19に対し、先行きは+15と、米中貿易戦争や世界経済の減速懸念を受けて、先行きへの不透明感が幾分強まっている状況。「2020年卒のニーズは高いですが、それ以降は景況感の影響がどの程度出るかは判断が難しい」(同)とも言及します。

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