はじめに

いくつもの新規商品が組成された、2018年の投資信託業界。年初にスタートした「つみたてNISA」の影響もあって特に人気が集まったのが、相対的に低コストが魅力の「インデックス型投信」でした。

実に、昨年だけで50本以上の新規ファンドが組成されたインデックス型投信。その中でも設定本数が急増したのが、特定のテーマに関連した指数への連動を目指した「テーマ型インデックスファンド」です。

大和証券投資信託委託や三菱UFJ国際投信、三井住友トラスト・アセットマネジメントなど、複数の運用会社が数種類の新規ファンドを設定しました。なぜ、ここに来て各社が力を入れ始めているのでしょうか。


既存のテーマ型投信の弱点を克服

2018年に「イノベーション・インデックス」シリーズとして、2本のテーマ型インデックスファンドを設定した、三井住友アセットマネジメント(SMAM)。6月に「AI」、9月には「フィンテック」をテーマとしたファンドをローンチしました。

どちらのファンドも、ドイツ取引所の子会社でスイスに拠点を置く大手指数プロバイダー「ストックス」から指数の提供を受けています。世界各国の企業の決算情報をAI(人工知能)に取り込み、該当テーマに関連した収益が全社の50%以上に達しているかを判断し、指数の対象銘柄を選出しています。

既存のテーマ型投信は高い専門性を持つファンドマネージャーが企業を調査し、個別銘柄を選定していたため、販売手数料や信託報酬が割高になっていました。それゆえ、一部では「テーマ型投信は長期投資に向かない」と言われてきました。

しかし、テーマ型インデックスファンドでは銘柄選別を人間ではなくAIが行うため、相対的にコストが抑えることができました。結果として、既存のテーマ型投信に比べて、信託報酬で1%程度、割安に設定することが可能になったのです。

新型テーマ型投信のメリットとデメリット

指数に組み込む銘柄の入れ替えは、毎年6月に実施します。それまでの間に当該テーマによる収益が全社の50%以上に達した企業は、必ず組み入れられる仕組みになっています。

年1回の見直しのため、ファンドマネージャーが常時チェックしている既存のテーマ型投信に比べると、業況が急変した場合の投資判断のスピード感は劣ります。半面、前述のようにコストは割安となるため、積み立て投資をする際にはコスト面で既存ファンドよりも優位といえます。

ここで注意しておきたいのは、イノベーション・インデックスシリーズはつみたてNISAの対象とはならないこと。理由は「用いている指数が、つみたてNISAの対象として金融庁が定める指数ではないから」(SMAMの曽志崎雄大・商品開発課長)。つみたてNISAでの運用を考えていた人は留意が必要です。

販社が販売しやすいテーマ型投信

それにしても、なぜ2018年に各社が立て続けにテーマ型インデックスファンドを投入したのでしょうか。SMAMの曽志崎課長は、商品ありきの安易な開発経緯を否定します。

「中長期的に若年層、特にオンライン証券で投信を買う人に訴求できる商品を設計しようというのが、開発時のテーマでした。40~50年の投資を前提に、比較的低コストでわかりやすいものにニーズがあると考えた結果が、テーマ型インデックスファンドでした」

そのうえで、こう付け加えます。「販売会社の若手社員に投信を販売してもらう際に、受け入れてもらいやすいのではないか、とも考えました」。

実は、既存のテーマ型投信には否定的な声が少なくありませんでした。前述したような販売手数料や信託報酬の割高さ以外にも、「特定のジャンルに特化しているので、リスク分散できていない」という指摘があります。

ほかにも、「テーマの旬を過ぎると基準価額が下がりやすいため、売買タイミングが難しい」「1つのテーマが終わると別のテーマ型投信を勧める『乗り換え営業』を販売会社がやりやすい」という声もありました。

「長くトレンドであり続けるテーマを選定」

まずリスク分散の指摘について、曽志崎課長は「ファンドラップやバランス型投信をメインに持ってもらいながら、成長性が期待できるファンドとしてサブで一部に組み入れていただく提案を徹底しています」と切り返します。テーマの旬については、「中長期にわたってトレンドであり続けるテーマを選定しています」と、自信を示します。

また、ハイテク企業の低コストで投資するのであれば、米ナスダックに連動するインデックスファンドで十分ではないか、と見る向きもあります。これについては、「ナスダックは玉石混交。AIという“横串”で選んだファンドのほうが成長できる企業も多く入っているはず」と反論します。

SMAMでは来年度にかけて、イノベーション・インデックスシリーズで合計4~5本の態勢を構築したい考えです。「投資の最初の一歩として最適なファンド。運用の一部として持っていただきたい」と曽志崎課長は意気込みます。

はたして、テーマ型インデックスファンドは中長期目線の若い投資家層にとって強力な武器となるのか。それとも、インデックス全盛に咲いた“時代のあだ花”になってしまうのか。銘柄選別がファンドのパフォーマンスに直結するだけに、最適な選別基準を構築できているかが、今後の浮沈を左右しそうです。

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